いつから何が変わる?民法改正で知っておくべき敷金の扱い方とは?

不動産投資を行うには、法律についての知識も必要不可欠です。

特に、賃貸経営をしている方にとって、大きな法律の改正が控えています。それは、120年ぶりに民法が改正されることです。これに伴い、関連法規も変わります

この改正には、敷金に関係する部分もありますので、投資家や大家はしっかりと内容を把握しておくことが大切です。 法律を知っておかないと、「気が付いたときには違法だった」ということにもなりかねません

そこで、この記事では民法改正について取り上げ、基本的な事項に加えて以下の件についても説明します。

  • ・大家にとってのリスク
  • ・入居者についての対処方法
  • ・これから入居する人について知っておくべきこと

「どんな影響があるの?」「何をすれば分からない!」といった人であっても、この記事で知識を深めれば「大家として何をすべきか」が把握できます。大家の被るリスクの詳細や入居者管理の内容、また、新たに必要となる連帯保証人対策について理解ができます。

不動産投資において知識は強い武器になります。何かがあった時でも影響を最小限に食い止められるよう、しっかりと学んでいただければと思います。

1.大家と民法の改正

大家と民法の改正

まずは今回の民法改正の概要を見てみましょう。

1-1.民法のどこが改正されるのか

今回改正される民法は、債権に関連する部分がメインとなります。

今の法律は1896年(明治29年)に制定された物であり、およそ120年前の物となっています。そして、この法律は約120年の間、大きな見直しが行われることがありませんでした。そのため、社会経済の変化に対応しきれていない部分が多く、そのためトラブルも多くありました。

今回の法律の改正では経済の変化への対応がなされ、現在の裁判や取引で慣行的に通用している基本的ルールを法律上でも明文化しています。ですから、トラブルが発生した場合などでも、法的に明確な対応が出来る様にもなります。

改正点は小さなところも含めますと200項目にも及ぶ大改正です。ただし、賃貸経営をおこなっている大家として押さえておくべき点は次の3つになります。

  • ・敷金と原状回復について
  • ・連帯保証人の保護について
  • ・建物の修繕に関して

内容としては、敷金の法的位置づけと適用が出来る範囲、退去時の原状回復がどこまでなのか、極度額の設定による連帯保証人の保護、借主の建物修繕の権利などについての改正となっています。

詳しくは2章で解説を行っていますが、いずれも不動産の経営には欠かせない物なので、貸主としてはしっかりと把握しておく必要があります。

1-2.いつから改正されるのか

この法律は2017年に成立しており、施行は2020年の4月1日となっています。

記事を執筆している現在から7ヶ月後ですので、スケジュールだけを見てみると、まだまだ先の話の様にも思えるかも知れません。しかし、施行前に訪れる進学や転勤などの引っ越しのシーズンを考慮すると、意外に時間はありません。

原状回復や敷金の扱いは、これまでもトラブルの種となっている背景があることを考えると把握しておくことは非常に大事です。また、不動産契約は一旦締結してしまうと、やり直しが効かないこともありますので、是非覚えておきましょう。

2.民法の改正で大家にとってどのようなリスクが発生するか

民法の改正で大家にとってどのようなリスクが発生するか

では次に今回の民法改正で、大家として発生するリスクについて紹介します。

2-1.敷金について

今回の改正の大きなポイントとなるのが、敷金についてです。これまで敷金は法律の中では明文化されておらず、商習慣としてやり取りされてきました。

そのため、曖昧な取り扱いとなり、大家と入居者の間でトラブルが多数発生していました。しかし、今回の改正で敷金が法的にも認められ、扱いも明確になったので、トラブルが減ることやトラブル発生の際の対応がしやすくなる可能性があります。

例えば、家賃の滞納があった場合、以前は敷金を充てるかどうかで争う場面が見られましたが、今回の民法改正により、以下のように対応できるようになります。

家賃滞納が発生している場合、敷金を家賃の滞納に充てることが出来ます。また、敷金から滞納した分を差し引いた分は借主に返すとも定められました。

ですから、大家がこれまで通り滞納分+αを「敷金で対応すれば何とかなる」などと考えていた場合、想定していた額の請求が出来ないと考えられます。つまり、ドンブリ勘定での敷金の扱いではトラブルに対応しきれなくなることも考えられます。

2-2.原状回復について

借主が物件から退去する際には、原状回復が借主の義務となっていましたが、その原状回復の範囲について大家と入居者が争うことが頻発していました。例えば、「入居前からあったカーペットのシミは原状回復の範囲になるかどうか?」でもめることがありました。また、原状回復には敷金が大きく関係しているため、退去時の原状回復範囲と敷金の返金でさらにもめることが往々にしてありました

原状回復については、以前より国土交通省によって原状回復ガイドラインが策定されていましたが、その中では、借主の原状回復の責任範囲は「過失による破損や摩耗」となり、「通常の使用の範囲の劣化」に関しては大家側の負担と決められていたのです。

具体的に言うと、例えばジュースなどの飲みこぼしなどの手入れ不足によるシミや、結露を放置していたために発生したカビなどは、入居者の過失とされて借主側の負担となります。その一方で、通常使用における畳や壁クロスの日焼けなどは通常使用の上での劣化となり、貸主側の負担となります。

とはいえ、あくまでもガイドラインであったため、法的には明文化されたものではありませんでした。

しかし、今回の民法改定で法的に原状回復についての責任範囲も明確になり、借主の責任は過失の部分で通常の劣化は貸主負担となりました。

2-3.連帯保証人に関して

今回の民法改正では連帯保証人に関する扱いも変わります。

特に変わるのが、極度額が定められる点です。これにより、連帯保証人の責任を負う額が定められ、連帯保証人が保護されることになります。

そのため、大家側としては、連帯保証人に対する請求権に限定が付き、一層のリスク管理が求められます。そして、限度額の取り決めは賃貸契約書の上でも定めることが義務となり、仮に定められていない場合には無効となります。

また、連帯保証人から大家側に、家賃の支払い状況などの問い合わせがあった場合には、遅延無く回答することが義務化されました。従って大家側としても、入居者管理の義務が重くなると言えるでしょう。

2-4.建物の修繕について

建物の修繕の取り決めについても明確化されました。

特に借主の権利として、物件を修繕する権利が謳われる様になったのです。

内容としては、物件に修繕の必要が発生し大家がその内容を知ったにも関わらず、その修繕がされない場合は借主の側で修繕が可能となり、その費用を大家側に請求出来ることとなりました。 また、借主側の責任では無い物件の故障などに対しては、使用不可となる部分に相当する額の家賃が減額されることも明記されています。

そのため、仮に修繕に対して考えが甘いと、家賃減額リスクを負う可能性もあります。 ただし、仮に借主側で設備を修繕するとして、原状よりも価格的に高額な物を設置した場合の負担割合はどうなるか、といった細かい規定に関しては追い付いていない状況もあります。

3.民法改正で今入居の人への対処法

民法改正で今入居の人への対処法

今入居している人への対処としては、敷金と原状回復、そして修繕に関する対応について考える必要があります。

まず、敷金の中で請求できる範囲が法的に決められます。そのため、敷金の位置づけの再確認と、どの様な債務にどれくらいの費用を充てることが出来るかを具体的に考えておく必要があります。

例えば、家賃や物件の状態の管理を強化し、仮に借主側にトラブルが発生した際には、敷金からどれだけ出せるかを計算しておくことが重要となります。 そのため、入居前の物件の観察と記録を徹底的にすること、原状回復に掛かる分も見込んでおく必要が出て来ます。

そして、物件に不具合が発生した場合、すぐに対処できるよう準備しておくことも必要です。物件に不具合が発生した場合には、すぐに適切に修繕しなくならなくてはならず、借主側で修理をした場合は、その費用を請求されることもありえます。

ですから、貸主が迅速な対応をしなければ、借主側で修繕されて想定外の出費を被ることになります。また、物件の設備の機能が落ちた場合には、それに応じて家賃を下げなければならなくなるからです。

4.これから入居する人への対処法

これから入居する人への対処法

これから入居する人への対処では、連帯保証人の義務の範囲の理解、そして敷金と原状回復に関する対策が重要となります。

まず、連帯保証人に関する条項です。連帯保証人に関しては、極度額を契約書の上で明確にして取り交わさないと、連帯保証契約自体が無効になってしまいます。 尚、限度額の決め方はこれからの話になるので、不透明の部分があります。ただ、「家賃〇〇か月分」あるいは「〇〇万円」の様になるとも考えられますので、今後情報を集める必要も出て来ます。

そして、敷金の扱いや原状回復に関しても明文化されたため、しっかりと対策を考えておく必要があります。

特に原状回復に関しては、設備の破損や劣化が過失によるものか、自然に発生したものなのかを確認しておくことがリスク回避に繋がります。設備の状態を写真などで記録を残しておくことなどが手段の1つになるでしょう。

5.まとめ

  • 1.今回の民法改正は120年ぶりの改正で、施工は2020年4月1日となっています。改正の内容は大家業に直接関係するのは、「敷金と原状回復について」「連帯保証人の保護について」「建物の修繕に関して」の3点となります。
  • 2.この改正により発生する大家としてのリスクは、「敷金について」「原状回復について」が中心となります。敷金が法的に認められて、原状回復の責任範囲が、過失は借主負担で通常の劣化などは貸主負担となりました。
    また、連帯保証人の責任範囲も決められ、極度額の範囲となりました。そして、建物の修繕義務に関しても変わりました。
  • 3.貸主の今入居の人への対処法としては、敷金が充てられる範囲を明確にしておくことや、物件の不具合発生に対する迅速な対応が必要となります。
  • 4.これから入居する人に対しては、連帯保証人の極度額についての取り決めを契約書の上でしっかりとすることが必要です。また、物件の状態に関しては、設備の状態を写真などで記録することが大切になります。

この様に、今回の民法改正により、貸主に対する責任が具体的になります。実際に施工されないとわからない部分もありますが、大家にとって不利になることは間違いないと思われます。

今後も法改正に伴う情報収集をしっかりと行い、法の範囲での経営を行わなければなりません。

法を理解しておかないと借主とのトラブル要因になり、余計な出費が発生するなどのリスクが生じるので、リスク回避のためにも、しっかりと調査をし、知識を身に着けておきましょう

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再建築不可物件の建築可能化プログラム

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