不動産投資に関心がある人なら「マンション経営とアパート経営、どちらがいいんだろう?」と一度は考えたことがあると思います。
単純に比較すれば、マンションのほうが規模は大きいので「早く大きな収入を得たい」という人に向いているわけですが、それでも「本当にマンション経営でいいのだろうか?」「マンション経営にはどんなリスクがあるのか?」「利回りや経費はどのくらい?」という疑問を持つ方もいるはずです。
また、「ワンルームマンション経営の勧誘が多いので困っている」という人も多いでしょう。「投資には興味はあるものの、株のように1日にして借金まみれな生活はしたくない。本当に儲かるのか。融資を受けてマンションを購入し、儲けるためにはどれくらいの期間がかかるのか知りたい」といった思いを持っているかもしれません。
そこでこの記事では、
- ・マンション経営とは?
- ・マンション経営のメリット
- ・マンション経営のデメリット
- ・マンション経営にかかる経費とは?
- ・マンション経営の収入はいくら?
- ・マンション経営を成功させるためには?
について現役の不動産投資家でもある筆者が徹底解説します。
この記事を読むことで、マンション経営とアパート経営のどちらが自分に合っているかわかるようになります。また、マンション経営を成功させるために必要なこともわかるので、次の一歩を踏み出しやすくなります。
本記事が「マンション経営で安定収入を得たい!」という方のお役に立つことができれば幸いです。
1. マンション経営には2種類ある
「マンション経営」には「ワンルーム(区分)マンション」と「1棟マンション」の2つの捉え方があります。
1-1. ワンルーム(区分)マンション
1つめは「ワンルームマンション経営」です。文字通り、マンションの1戸に投資することを指します。価格は数百万円〜3000万円程度が主流で、初めて不動産投資をする人でもリスクが少ないため、始めやすいという特徴があります。
ちなみに、不動産投資における「ワンルームマンション」は「間取りが1R(もしくは単身向け)」という定義もされることが一般的で、それ以上に部屋数が多い場合は「区分マンション」といわれます。
つまり、同じ「マンションの1戸に投資する」といっても、
- 単身向け/純粋なワンルーム(広さ10後半〜20平米程度)
- 単身やDINKS向け/少し広め(30中盤〜50平米程度)
- ファミリー向け(60〜80平米程度)
といったように幅があります。
よく「新築ワンルームマンション投資は儲からない」といわれますが、これを聞いて「じゃあ一棟投資じゃなきゃダメなんだな」と思っている人がいたとしたら、それは勘違いです。
上に挙げた②、③のように「マンション1戸」といっても広さや間取りによってさまざまですし、①であっても築年数や立地によっては投資対象になる可能性は十分にあります。
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1-2. 一棟マンション
2つめは「一棟マンション経営」です。こちらも文字通り「1戸ではなく1棟まるごとマンションを購入して投資する」ということです。一般的に「マンション経営」という場合(特にアパート経営と比較する際には)、こちらを意味することが多いです。
「アパート」と「マンション」の違いはをご存じでしょうか?
一般的には、マンションは階数に制限がなく、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造で建てられます。一方、アパートは階数が2〜3階程度で、木造もしくは軽量鉄骨造であるものを指すことが多いです。
つまり、「階数」と「構造」によってアパートかマンションかが分かれるわけです。
しかし実は、アパートとマンションを明確に区別する定義はありません。そのため物件を扱う業者によって、どちらで呼ぶかが変わってきます。たとえば、3階以上の場合、構造が分かりにくく、なおかつアパートよりマンションのほうが入居募集に有利との考え方から、木造であっても「マンション」として入居募集している会社はあるそうです。
とはいえ、これは稀なケースですので、本記事では上に挙げた一般的な解釈におけるアパートとマンションで話を進めていきます。
2. マンション経営のメリット
マンション経営のメリットは、「安定収入を得られる」「レバレッジを効かせられる」「手間がかからない」「節税効果がある」など、アパート経営とほぼ同じです。
そこで、ここではアパート経営と比較したマンション経営のメリットを紹介します。
- 収益メリットを最大に活かせる
- 入居者の属性が高く滞納リスクが低い
- 長期間の融資が受けやすい
アパート経営のメリットは以下の記事からお読みください。
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2-1. 収益メリットを最大に活かせる
アパートは4〜8戸が大半ですが、マンションはその何倍もの規模の物件も珍しくありません。そのため、一棟あたりの稼ぐ力はマンションのほうが高いといえます。もしそのマンションが周辺エリアでも競争力のある物件なら、稼働率は高くなり、短期間で大きな収入を得ることも可能です。
また同じエリア・築年数で比較すると、アパートよりも1室あたりの家賃が高くなるので、「稼ぐ力」はマンションのほうが高いといえるでしょう。
2-2. 入居者の属性が高いので滞納リスクが低い
これもエリアや築年数が同条件で比較した場合ですが、マンションのほうが家賃が高いので入居者の属性が高くなります。したがって家賃滞納の可能性が低いといえます。さらにマンションのほうが構造的に防音性能が高いので、隣人同士のトラブルも少ない傾向があります。
2-3. 長期間の融資を受けやすい
融資を受けるときは、その物件の「残存耐用年数」が大きな要因となります。木造アパートの法定耐用年数は22年、RC造マンションの法定耐用年数は47年です。法定耐用年数を超えて融資する金融機関は数が絞られますので、長期間の融資を受けてレバレッジを効かせたいのならマンションが有利となります。
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3. マンション経営のデメリット
マンション経営のデメリットも前項と同様、「空室リスク」「修繕リスク」「入居者リスク」「災害リスク」など基本的な部分はアパート経営と同じですので、ここではアパート経営と比較したマンション経営のデメリットを紹介します。
- 物件価格が高い
- 建築費・維持費・管理費が高い
- 収益を上げるための戦略の幅が狭い
3-1. 物件価格が高い
アパートなら2000万〜3000万円で買える物件もありますが、マンションになると一般的にその倍以上は高くなります。その分、自己資金を多く用意しておく必要がありますし、融資も厳しくなります。「始めやすいかどうか」という意味では、アパート経営のほうがハードルは低いといえるでしょう。
3-2. 建築費、維持費、管理費が高い
アパートと比較すると、マンションは構造的に建築するのに高いお金がかかります。これはみなさんの感覚的にも同意いただけると思います。また、エレベーターは維持費、故障した場合の修理代も高額です。大規模修繕のときには1000万円以上かかるケースも珍しくありません。マンションはアパートよりも稼ぐ力は強いですが、その分出ていくお金も多いので、得たキャッシュフローは貯めておくことが大切です。
3-3. 収益を上げるための戦略の幅が狭い
アパートの場合、そのまま収益物件として売ることはもちろん、建て替え、更地など出口戦略の幅が広いです。一方、マンションは建て替えや更地に時間とお金がかなりかかるので、現実的な選択肢にはなりません。そのため出口戦略の幅がアパートよりも狭いといえます。
4. マンション経営にかかる経費とは?
マンション経営を行う場合、賃貸経営を通じて支払った費用の大部分を、必要経費として計上可能です。 経費にできるものは種類が多いので、順番に確認していきましょう。
4-1. マンション購入時にかかる主な諸経費
- ・印紙税
- ・登録免許税
- ・不動産取得税
- ・ローン手数料
- ・司法書士報酬
- ・仲介手数料
- など
4-2. マンション経営で毎年かかるランニングコスト
- ・管理委託費
- ・建物の維持費(エレベーターの定期点検・消防点検など)
- ・固定資産税・都市計画税
- ・損害保険料
- ・修繕費
- ・ローンの金利
- など
4-3. 確定申告で経費にできるもの
- ・固定資産税・都市計画税
- ・その他税金(不動産取得税、登録免許税、印紙税)
- ・仲介手数料
- ・司法書士や税理士への報酬
- ・保険料
- ・減価償却費
- ・修繕費
- ・管理委託費
- ・広告宣伝費
- ・ローンの金利
- ・借地料
- ・旅費交通費
- ・通信費
- ・事務用品費
- ・新聞や書籍、セミナー費
- ・接待交際費
- ・消耗品費
各経費の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています。
すでにアパート経営をしていて、収益物件を所有し、家賃収入を得ている方のなかには「確定申告をする際、どんな経費が認められているの?」「経費について知らないがゆえに税金を多く支払うのは避けたい」「申告を間違って、税務署から指摘される恐怖から解放[…]
4-4. 確定申告で経費にできないもの
続いて、経費にならない費用を理解しておきましょう。
- ・事業に直接関係のない出費(プライベートの利用部分を除く)
- ・所得税や法人税
- ・反則金・罰金など
これらは経費にすることはできません。詳しくは上記と同じ、以下の記事で解説しています。
すでにアパート経営をしていて、収益物件を所有し、家賃収入を得ている方のなかには「確定申告をする際、どんな経費が認められているの?」「経費について知らないがゆえに税金を多く支払うのは避けたい」「申告を間違って、税務署から指摘される恐怖から解放[…]
5. マンション経営の収入は人によって千差万別
マンション経営でどれくらい稼げるのか。この答えは物件、融資条件などによって大きく異なります。地方の大型マンションであれば収益力は高いものの空室リスクがあるでしょうし、都心部であれば物件価格は高額ですが、空室リスクは少ないでしょう。
マンション経営をはじめとする不動産投資における収入は、以下のように計算します。
キャッシュフロー(手残り)=家賃収入+支出合計
いくら家賃収入が多くても支出が多ければ手残りは少なくなります。かといって、「家賃収入が高く、支出が少ない」という理想的な物件はまず存在しないため、「どこで・どれだけのリスクを取って収益性を上げるか?」ということが人によって判断がわかれるところです。
5-1. 利回りは高いほどいいのか?
物件選びの際には「利回り」を重視する人は多くいます。利回りとは収益性を表す指標であり、以下の計算式で求めることができます。
利回り=年間の家賃収入÷物件価格×100
例えば、物件価格1億円、毎月の家賃の合計が100万円のマンションの場合、
1200万円(年間の家賃収入)÷1億円×100
という計算式になり、利回りは「12%」となります。
これは物件価格に対して、毎年12%分(1200万円)を得られることになり、計算上では8年数カ月でペイできることになります。つまり、単純計算で約8年後にはトータルの家賃収入が物件価格を超えるということです(金利や家賃下落リスクは考慮しない場合)。
しかし、「利回り」と一口にいっても、実は「表面利回り」と「実質利回り」の2つがあります。投資物件のパンフレットやサイトに記載されている「利回り◯%」は、ほとんどが表面利回りです。上記の計算式も「表面利回り」です。
実質利回りの計算式は以下になります。
「(1年間の家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100」
このように実質利回りは諸経費を含んだ計算式になっているため、表面利回りも実態に即した指標といえるのです。
表面利回りの高さに踊らされると、高リスク物件をつかまされてしまうリスクがあるので注意が必要です。
5-2. エリア&物件種別・平均利回りは何%?
利回りを考えるうえで、平均がどれくらいなのか知っておく必要があります。
以下の記事では、エリア別・物件種別の想定利回りを紹介しています。興味のある方はぜひご一読ください。
収益物件を探すとき、あなたはどの数字を意識しますか?きっと多くの方が「利回り」と答えるのではないでしょうか。不動産投資の未経験という方でも「利回りが高いほうが良い」と思っている人は多いはずです。 とはいえ、特に初心者の方であれば、次のよう[…]
6. マンション経営を成功させるためには?
一棟マンションだと1億円以上であることも珍しくありません。初めて不動産投資をする人にとって心理的ハードルは高いといえるでしょう。
ただし、一歩踏み出せれば収益性が高いのは事実です。「早く・大きな資産を築きたい」という人には向いているといえます。
では、マンション経営を成功させるためには、どうすればいいのでしょうか。
6-1. 一般的な金銭感覚を失わない
1つめは「金銭感覚を正しく保つこと」。マンション経営の場合、物件価格で1億円以上、大規模修繕で1000万円以上というケースも多いので、期間が経つにつれて金銭感覚がマヒし、どんぶり勘定になりがちです。日常生活では10万円でも大金ですが、あまりに動く金額が多いと10万円を1000円程度の感覚で考えてしまうのです。
しかしマンション経営で成功している人は、お金にシビアです。
「経営者として必要な財務マネジメント」というイメージです。
経営者がどんぶり勘定だったら、そんな会社で働くのは怖いと思うはずです。マンション“経営”というように、投資ではなく経営と考え、正しい金銭感覚を維持してください。
6-2. キャッシュフローを使わずに貯めておく
キャッシュフローが出ると、ついつい使いたくなってしまうかもしれませんが、これは危険です。「マンション経営のデメリット」でもお伝えしたように、マンションは維持費、修繕費が高額です。何か不測の事態が起こったときにも対応できるよう、得たキャッシュフローは貯めておきましょう。また、キャッシュフローは緊急時に使えるだけでなく、次の物件を買うための準備資金にもなります。
7. まとめ
- 1. マンション経営には、「ワンルーム(区分)マンション」と「一棟マンション」があるが、一般的には「マンション経営=一棟マンション経営」を指す
- 2. アパート経営と比較した場合のマンション経営のメリットは「スケールメリットを生かせる」「入居者の属性が高い」「長期間の融資を受けやすい」などがある。一方のデメリットは「物件価格が高い」「建築費、維持費が高い」「出口戦略の幅が狭い」などがある
- 3. いくら家賃収入が多くても支出が多ければ手残りは少なくなる。かといって、「家賃収入が高く、支出が少ない」という理想的な物件はまず存在しないため、「どこで・どれだけのリスクを取って収益性を上げるか?」ということが人によって判断がわかれる
- 4. マンション経営を成功させるためには、「一般的な金銭感覚を失わない」「キャッシュフローを使わずに貯めておく」といったポイントがある
いかがでしたか。マンション経営はアパート経営よりもハードルは高いですが、リスクを見極めて良い物件を購入できれば、他の投資手法よりも早く・大きな資産を築けるという側面もあります。アパート経営と基礎的な部分は同じですので、本記事で紹介したリンク先もお読みいただき、知識を深めてください。
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