「デッドクロス」が怖い!黒字なのに倒産?その仕組みと問題点とは

不動産投資をそれなりに勉強している方なら「デッドクロス」という言葉を聞いたことがあると思います。しかし、概念がわかりづらいことから「なんとなく」理解している人も多いのではないでしょうか。もしくは「一度も聞いたことがない」という方もいるかもしれません。

この記事では、

  • ・デッドクロスとは何か
  • ・デッドクロスが起こるとどうなるのか

について解説します。

詳細は本文にまとめましたが、デッドクロスは回避する方法を知らないと黒字倒産する可能性がある仕組みであり、非常に重要な知識です。倒産というのは、すなわち投資の最悪の結果を意味します。黒字倒産の怖さを知らない人も含め、初心者、上級者問わず読んでいただきたいと思います。

1.「デッドクロス」が起こる仕組みは?基本的な構造と計算方法

「デッドクロス」が起こる仕組みは?基本的な構造と計算方法

1-1.デッドクロスの理解で最も大切な「減価償却」とは?

デッドクロスとは、「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」を指します。

減価償却費とローン元金返済の図解
・・・・・・と言葉にしてみると非常に簡単なのですが、具体的なイメージがつかめず、なかなかわかりづらいと思います。
まず用語の整理から、丁寧に見ていきましょう。

減価償却とは、購入年に一度に経費として計上するのではなく、分割して1年ずつ計上することをいいます。不動産はもちろん、電化製品や機械設備・内装設備など高額な買い物をするときに減価償却は発生します。

なぜ、減価償却をしなければならないのでしょうか。
例えば、機械設備や内装設備などは、購入金額が高額であり、使用期間が長期間に及びます。ですが、購入時点で購入金額を全額経費にしてしまうと、その年度だけ経費が大きくなり、大きな赤字となってしまいます。これでは、その年度の正しい業績が把握できません。

そこで、減価償却によって「分割して1年ずつ計上する」という手続きが必要になるのです。例えば、1000万円の減価償却資産を購入した場合、250万円を4年に分けて経費として計上するというイメージです。

不動産の場合、「建物の価値は築年数を経るごとに低下していく」という考えがあります。そのため、物件の構造に応じて定められた耐用年数から求める償却率をもとに計算します。

減価償却費を求めるには、取得費、耐用年数、償却率を求める必要があります。

「建物の取得費」は契約書もしくは計算で算出

売買契約書に土地、建物の金額が記載されていれば契約書通りの金額を用いましょう。もし記載されていない場合は、固定資産税評価額を元に分けて計算しなければなりません。

取得費となるものは国税庁のホームページから確認できます。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3252.htm

「耐用年数」は法定耐用年数と築年数で計算しよう

耐用年数を計算するためには、まず主な法定耐用年数を把握する必要があります。

<法定耐用年数>
木造・・・22年
重量鉄骨・・・34年(骨格材の肉厚の厚さによって変動あり)
鉄筋コンクリート(RC)・・・47年

法定耐用年数わかったら耐用年数の計算をします。
築年数によって、以下のように耐用年数の計算方法は異なります。

  • ・築年数が法定耐用年数を全て経過した場合
    耐用年数=法定耐用年数×0.2(端数切り捨て)
  • ・築年数が耐用年数を全て経過していない場合
    耐用年数=(法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2(端数切り捨て)

調べるだけで分かる「償却率」の情報元は?

次に、以下のサイトを元に償却率を調べましょう。

国税庁:「減価償却資産の償却率表」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf

※なお、不動産の取得日が平成19年4月1日以降か、平成19年3月31日以前か確認するところが異なるので注意が必要です。

減価償却費の計算式は一般的な「定額法」で算出

建物の取得価格、償却率が算出できたら、いよいよ減価償却費を計算できます。

減価償却費の計算式には、

  • ・定額法:建物の取得価格×償却率 
  • ・定率法:(建物の取得価格-前年度までの償却費の総額)×償却率

の2つがありますが、基本的には「定額法」を使うと考えて差し支えありません。

1-2.ローンの元金返済は「利息のみ経費計上」がポイント!

少し脱線したので、話を戻しましょう。
デッドクロスとは、「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」でしたね。

減価償却費の説明は上述したので、次は「ローンの元金返済額」を見ていきましょう。
といっても、これは特別な説明は必要ないでしょう。ローンの元金返済額とは、毎月金融機関に返済するローンの金額を指します。

ここでのポイントは、元金返済部分については経費として計上できず、利息分のみ経費計上できる」ということこれは非常に重要なので、必ず押さえておいてください。

ここまででデッドクロスの定義については一通り理解できたかと思います。
ここからは話をより掘り下げていきましょう。

2.デッドクロス最大の問題は「所得税増加による資金繰りの悪化」

デッドクロス最大の問題は「所得税増加による資金繰りの悪化」

2-1.黒字なのに資金繰りが悪化するのは所得税が増えるから

賃貸経営がデッドクロスの状態に陥ると、「帳簿上の利益が黒字にもかかわらず、手元資金が不足する」可能性があります。さらに、懸念すべき事項として、帳簿上の黒字に対して所得税が増え、資金繰りが苦しくなってしまうこともあるのです
これが続くと、最悪の場合、「帳簿上では利益が出ているのに、資金が足らずに黒字倒産」というケースも起こり得ます。

では、なぜ所得税が増えてしまうのでしょうか。その仕組みは次章以降のデッドクロスの仕組みで解説していきます。

2-2.ここがポイント!図で理解するデッドクロスのくわしい仕組み

さて、ここからは上で解説した内容を深く見ていきます。
まず減価償却費は、「一括で経費計上はできず、分割して1年ずつ計上するもの」でしたね。実際に支出があるわけではないのですが、帳簿上では分割しているわけです。
減価償却は毎年決まった金額を計上する図解

一方、元金返済額は現金の支出が伴うものの、経費として計上できるのはローン返済額のうち、利息相当部分のみでしたね。

ここで問題が出ます。
ローン返済が進めば進むほど元金返済ができるため、利息は減っていきます。つまり、経費にできる利息も少なくなり、経費に計上できない現金支出が増えるのです
ローン返済に関する図解しかし、一方で減価償却費は一定額経費計上しています。これがあるとき、減価償却費より元金返済の額が上回り、「帳簿上では利益が出ているのに、資金が足らなくなる」という現象が起こるのです。これがデッドクロスです

減価償却費とローン返済額の図
デッドクロス状態の図

2-3.事例で知ろう!デッドクロスで増えるリアルな税負担

少々わかりづらいので、極端にシンプルな事例で説明しましょう。

  • 例えば、築12年の木造アパートを購入したとします。

10年目までは減価償却費が300万円だとしましょう。
このケースの場合、11年目以降は法定耐用年数を超過するので、減価償却費は0円になります。つまり、経費計上できる費用が毎年300万円減るのです。

一方、元金返済額のうち利息部分は、返済が進むにつれて減少していきます。

1年目100万円だったものが10年目55万円になり、そして法定耐用年数を超過した11年目以降も、11年目50万円、15年目には30万円と減っていきます。つまり、毎年着実に経費計上できる費用が減っていくわけです。

つまりこの例だと、1年目は「減価償却費の300万円、利息分の100万円」の計400万円が経費にできたのに、15年目になると「減価償却費0円、利息分30万円」の計30万円しか経費計上できないのです。

ここで、1年目と15年目で同じ利益が出ていたらどうなるでしょう。

1年目は400万円の経費を計上できるので、税負担はその分軽くなります。

しかし、15年目は30万円しか経費計上できないので、大きく黒字が出ることになります。黒字が出るということは、その分多くの税金を負担しなければなりません。

ポイントは、「ここでいう黒字とは“帳簿上の黒字”であり、実際の黒字とは関係ない」ということです。

考えてみてください。1年目と15年目を比較すると、あくまで減価償却費と利息という経費にできる科目が減っただけであり、家賃収入が増えたわけではないのです。

そのため、「収入が増えていないのに、納税額が増える」という逆転の現象が起こります。そして、収入に対して納税額が大きくなりすぎて資金繰りが立ち行かなくなると、「(帳簿上では)黒字なのに倒産」という事態に陥るのです。

他の記事や書籍ではいろいろ解説されていますが、デッドクロスの一番のポイントは、
「年月が経つにつれて、減価償却費と利息の経費計上できる金額が減り、利益がたくさん残ってしまう(=税負担が大きくなる)」ということです。デッドクロスと聞くと難しいと思ってしまいがちですが、実は意外とシンプルなのです。

2-4.株式投資のデッドクロスは「売りシグナル」のひとつ

株式投資におけるデッドクロスとは、「株価が大きく上昇後、短期の移動平均線が、長期の移動平均線を上から下に抜く現象のこと」で、一般に売りのサインといわれています。移動平均線とは、代表的なテクニカルチャートのひとつで、ある一定期間の価格から平均値を計算し、折れ線グラフで表したものです。

ここで深く説明するのは本題から外れすぎるので避けますが、株式投資におけるデッドクロスはネガティヴな現象ではありません。むしろ、その現象を武器に儲けるチャンスといえます。

2-5.減価償却費を利用した節税スキームの仕組みと考え方

最後に、デッドクロスと関連して、減価償却費による節税の考え方をみていきましょう。

  • 例えば、年間家賃収入が600万円、減価償却費は500万円の物件を購入したとします。

繰り返し述べているように「減価償却費は経費にできる」わけですから、600万円から500万円を引くことができ、100万円が不動産所得(利益)となります(わかりやすくするために、他の経費は無視しています)

つまり、この100万円に対して発生する税金を支払えばいいのです。

不動産所得は(他の所得と損益通算できる)総合課税ですので、例えば年収1000万円の方なら実質1100万円となり、その分の所得税を支払うわけです。

さて、これを踏まえてさらに極端な例を見ていきましょう。

年間家賃収入が300万円、減価償却費は500万円の物件の場合、どうなるでしょうか。

上と同じように計算すると、「300万円 − 500万円」になるので、−200万円の赤字が出ることになります。

しかし、たとえ不動産所得が赤字でも、その分の赤字も総合課税の対象になりますので、年収1000万円なら、200万円を引いて実質800万円の給与所得とみなされ、所得税が下がるのです。  

以下の累進課税の表をご覧ください。

課税される所得金額

税率

控除額

195万円以下

5%

0円

195万円を超え 330万円以下

10%

97,500円

330万円を超え 695万円以下

20%

427,500円

695万円を超え 900万円以下

23%

636,000円

900万円を超え 1,800万円以下

33%

1,536,000円

1,800万円を超え4,000万円以下

40%

2,796,000円

4,000万円超

45%

4,796,000円

今回の事例の場合、年収1000万円だと求める税額は次のようになります。

1000万円×0.33(税率)− 153万6000円(控除額)=176万4000円が所得税です。

一方、不動産所得で200万円の赤字が出た場合、総合課税によって実質年収は800万円になるので、求める税額は次のようになります。

800万円×0.23(税率)− 63万6000円(控除額)=120万4000円が所得税です。

見ていただければわかるとおり、56万円もの差があります。これは単純に税率が33%から23%になったのが大きいといえます。

繰り返しになりますが、この例ではあくまで減価償却費による帳簿上の赤字であるため、実際に出費が発生しているわけではありません。

つまり、この例だと年収1000万円の人は不動産投資によって実質年収が800万円になり、節税ができたわけですが、本当の意味での収入は下がっていません。シンプルに税金が安くなったということです。これが不動産所得や給与所得の圧縮でできる節税スキームです。

3.まとめ

1.デッドクロスとは、「ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態」を指す。

2.減価償却費とは、建物や建物設備を購入時に一括して経費計上するのではなく、利用できる期間に振り分けて経費計上するもの。現金の支出を伴わない帳簿上の費用なので、減価償却費を計上した分だけ経費も増え、利益を圧縮して節税につながる。

3.一方、毎月のローン返済は現金の支出が伴うものの、経費として計上できるのは、ローン返済額のうち、利息相当部分のみ。この利息相当部分も、返済が進むにつれて額が減っていく。

4.年月が経つにつれて、減価償却費と利息の経費計上できる金額が減ってしまうという状況が起こる。これはつまり、減価償却費と利息という節税に有効な2つの武器を失うということ。場合によっては、黒字が発生しすぎて納税するキャッシュがない(黒字倒産)という状況に追い込まれる。

いかがでしたか。不動産投資を行ううえでデッドクロスの知識は必ず身につけておく必要があります。というのも、何も知らないままだと「満室経営できているのに、それ以上に税負担がかかって破産する」という黒字倒産の恐れがあるからです。
では、デッドクロスを避けるためにはどうすればいいのでしょうか。
詳しくは以下の記事をご参照ください。

デッドクロス2

「デッドクロス」が怖い!黒字なのに倒産?その仕組みと問題点とは
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