既存不適格とは?違法建築や再建築不可との違い、収益化の秘訣を公開

インターネットで不動産情報を探していて、物件概要や注意事項の欄に「既存不適格」と書いてある物件を見かけたことはありませんか? 一般生活ではまず聞くことがない用語ですので、調べた経験がある人も多いかと思います。

しかし、「どんなことに気をつければいいのか」「メリット・デメリットは?」という疑問をお持ちの方や、あるいは初めて聞く用語のため「そもそも既存不適格って何?」という方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、

  • 既存不適格とは
  • 改修や増築について
  • 違法建築との違い、再建築不可との違い
  • 既存不適格建築物のメリット、デメリット
  • 既存不適格を購入・売却する際の注意点

を中心にお伝えします。

不動産投資を勉強していると、難しそうに見える専門用語にたくさん出合います。今回の「既存不適格」もその一つでしょう。しかし、「知ろう」と一歩踏み出せば、意外と理解しやすい概念だったりします。初めて聞く人でもわかるように丁寧に解説しますので、ぜひこの機会に既存不適格の正しい知識を身につけていただければと思います。

1. 既存不適格とは

既存不適格とは

1-1.「既存不適格」とは何か?

既存不適格とは、「建設時に適法だったが、以降の法改正などで法不適合になった状態」を指します。より正確にいうと、「建築・完成時には旧法・旧規定の基準で合法だったが、その後、法令の改正や都市計画変更などにより、現行法に対して不適格な部分が生じている状態」です。既存不適格が生じている物件を「既存不適格建築物」と呼びます。

つまり、物件概要や注意事項の欄に「既存不適格」と書かれている場合、現行法に対して何らかの不適格な部分を有しているというわけです。

1-2.既存不適格になった例

では、どのようなケースで既存不適格になるのでしょうか。いくつか例を見てみましょう。

「建築基準法の道路が4m以上の幅員」と定められて既存不適格となる場合

大正時代に制定された「市街地建築物法」では、当初「2.7m以上の道路に接していなければ建築することができない」という規定になっていました。

しかしその後、法改正で要件が強化され、建築基準法でも「4m以上の道路に接しなければならない」という規定に変更しました。つまり、古い物件で2.7m以上4m未満の接道状態だと既存不適格になっているということです。

建築基準法の道路が4m以上の幅員」と定められて既存不適格となる場合の図

「日影規制」によって既存不適格となる場合

日照権訴訟が多発したため、1976年の建築基準法改正で日影規制の導入が可能になりました。しかし導入前に建てられたビルの中には、日影規制の既存不適格になっている事例があります。

「新耐震基準」によって既存不適格となる場合

耐震基準の改正前に建てられた建築物の中には、耐震強度が不足しているものもあります。特に1981年(昭和56年)の耐震基準改正は大きな改正で、これ以降のものを「新耐震基準」と呼んでいます(それ以前のものは「旧耐震基準」)。

※なお、構造に関する規定は1981年以降もたびたび改正されているため、1981年以降に着工された建築物だとしても、すべてが現行の耐震基準に適合しているわけではありません。

「用途地域」が変更になり既存不適格となる場合

都市計画で用途地域が定められる以前から稼動していた工場のなかには、後から住居専用地域に定められたため、既存不適格になった事例があります。

「建物の高さ」が変更になり既存不適格となる場合

建築物の高さも既存不適格になるケースがあります。例えば世田谷区では、平成8年5月に現行の用途地域が定められ、第一種低層住居専用地域では10m以下、第二種低層住居専用地域では12m以下とするように高さ制限が指定されています。

しかし、平成8年5月よりも前に建てられた建築物については、高さ制限の適用を受けません。そのため、低層住居専用地域だったとしても、規定の高さを超えた建築物が存在しています。

建物の高さの図解

いかがでしょうか。これはあくまで一例に過ぎませんが、どのような理由で既存不適格になったのかイメージがついたかと思います。

ちなみに、建築基準法等の規定はほぼ毎年のように改正されます。したがって、「世の中の大半の建築物は既存不適格かもしれない」という認識を持っていても決して大げさではないといえます。

1-3.現行法に合わせなければ違法なのか?

既存不適格建築物は、原則、「増築や建替えを行う際には、法令に適合するよう建築しなければならない」ということになっています。逆にいうと、増築や建替えをしないのであれば、是正命令が下ることはありません。

ただし、例外や注意点があります。

是正命令が来るパターン

建築基準法第10条第3項では、「特定行政庁が、著しく保安上危険であり、または著しく衛生上有害であると認める場合においては、保安上または衛生上必要な撤去や使用禁止などの措置を取るように命令できる」という内容の規定があります。建築基準法第10条第3項で規定されています。

「著しく保安上危険」というのは、以下のような場合です。

  • ・劣化や自然災害などが原因で倒壊する可能性が高い
  • ・倒壊した場合に、通行人などに被害が及ぶ可能性が高い
  • ・是正命令を行う社会的必要性がある

また、「著しく衛生上有害」というのは、以下のような場合です。

  • ・建築物または設備などの破損が原因で通行人などに被害が出る可能性が高い
  • ・是正命令を行う社会的必要性がある

条件緩和もある

また、重要なのは、「敷地内に法不適合な状態で立っている建築物の全てが既存不適格に該当するわけではない」ということです。

例えば、建設時点ですでに建築基準法に違反していた建築物は、「既存不適格建築物」ではなく「違反建築物」として扱われます。 つまり、一口に「現行法に対して何らかの不適格な部分を有している」といっても、既存不適格建築物の場合と、違反建築物の場合があり、まずはその見極めをしなければならない、ということです。

そして少々複雑になってくるのですが、既存不適格建築物に対して増築や建替えを行う場合、基本的には既存不適格の部分にも新規定を適用する必要があるわけですが、すべての項目を新規定に合わせることは難しいため、建築基準法86条の7では制限の緩和を定めています。

考えてみてください。例えば、旧耐震基準で設計された建築物の構造強度を補強によって現行基準にすべての物件に対して適合させることは、理論上は可能であっても、現実にはほぼ不可能です。

こうした問題から、2005年より既存不適格建築物について、一定の条件下では緩和が行われることとなったのです。

例えば、耐震構造に関する緩和規定は2009年にも改正されましたが、既存部分の半分以下の増改築などの一定の条件下では、構造強度自体が緩和されるだけでなく、法的手続きについても大幅に軽減されています。

2.違法建築との違い、再建築不可との違い

違法建築との違い、再建築不可との違い

ここでは、既存不適格建築物と違法建築、再建築不可の物件との比較を見ていきましょう。

2-1.違法建築との違い

既存不適格と違法建築との違いは、上述したように「建築時のタイミングで合法だったか否か」ということがポイントとなります。建築時は合法だったが、現行法に対して不適格な部分が生じている場合は「既存不適格」、そもそも建築時に建築基準法に違反していた、もしくは建てた当初が法令に合っていても、その後の増改築工事などを行うことによって法令に合わなくなった建物建築物が「違法建築」となります。

なお、違法建築物の場合は検査済証が取れなくなります。その要因はさまざまありますが、主な原因は以下になります。

  • ・建蔽率オーバー
  • ・容積率オーバー
  • ・斜線制限違反
  • ・用途制限違反
  • ・接道義務違反
  • ・無確認建物

検査済証については以下の記事で詳しく解説しています。

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2-2.再建築不可との違い

「再建築不可物件」とは文字通り、「建物を壊して、建て替えるとき、建築ができない物件」を指します

なぜ再建築不可かというと、建築基準法第42条により、原則幅員4m以上の道路の接道義務を満たさないことです。再建築不可物件は融資が付かない(もしくは付きづらい)ので、購入検討をする際は、自己資金で工面できるかどうかを十分検討する必要があります。

3.既存不適格建物のメリット・デメリット

既存不適格建物のメリット・デメリット

ここまで既存不適格の概要や違反建築、再建築不可との違いを紹介しました。どちらかというと、ネガティブな話題が多かったですが、既存不適格の物件を買うメリットはないのでしょうか。デメリットと合わせて見てきましょう。

3-1.既存不適格のメリット

メリットは主に以下が挙げられます。

  • 価格が安い(利回りが高い)
    既存不適格建築物は、増築や建替えを行う際に法令に適合するよう建築しなければならなかったり、再建築が不可能だったりなどの理由から、土地の利用価値や資産価値は低くなります。そのため、周辺エリアの同じような物件よりも価格が安くなり、利回りも高くなる傾向があるのです。

  • リフォームやリノベーションは可能
    仮に再建築不可であったとしても、大幅なリフォームやリノベーションをすることは可能です。したがって、上に挙げた「価格が安い(利回りが高い)」につながりますが、安く買ってリノベして高く売るといった“歪み”を用いた戦略が可能となります。

  • 税金が安くなる
    資産価値が低いため、固定資産税評価額も低く設定されています。したがって、固定資産税評価額を基準に算出される「固定資産税」「都市計画税」「相続税」「贈与税」も安くなります。

3-2.既存不適格のデメリット

続いて、デメリットも見ていきましょう。

  • 融資を受けるのが難しい
    担保価値が低いため、ローンで物件を購入することが難しいです。特に容積率や建ぺい率が10%以上オーバーしている物件は、審査を通過するのは難しいといえます。
    仮に融資を受けられたとしても、自己資金を通常の物件よりも多く求められたり、金利が割高になったりします。
  • 倒壊リスク
    再建築が不可能の場合、災害などで倒壊してしまったらその土地に建物を建てることができません。
  • 出口が取りづらい
    ローンが基本的に使えないため、物件を売りに出しても買い手がつきづらいといえます。ただし、立地の良い既存不適格の物件を取り壊して更地にして売却益を狙えるケースもあります。

4.既存不適格の物件を購入・売却する際の注意点

既存不適格の物件を購入・売却する際の注意点

4-1. 購入時の注意点

既存不適格の物件を購入検討する際は、以下の項目はチェックする必要があります。

  • ・高さ制限
  • ・用途地域(建ぺい率、容積率等)
  • ・地区計画、風致地区(建ぺい率、容積率、隣地間距離など)
  • ・条例(接道条件等)
  • ・建築基準法等の自治体の解釈

また、上述したように既存不適格物件は融資を受けるのが難しくなります。現金一括で買うのか、あるいは資金調達する際は金融機関とのつながりがある不動産会社に依頼するか、事前に考えておいたほうがいいでしょう。

4-2.売却時の注意点

続いて、売却時の注意点を見ていきましょう。

  • ■事前に買い主に告げる必要がある

    既存不適格であることを告げ、どういった制限を受ける可能性があるかについて買い主に納得をしてもらう必要があります。隠したまま売却した場合、告知義務違反によって契約解除されてしまったり、最悪の場合、損害賠償を請求されたりする可能性があります。

  • ■買い叩かれる可能性がある

    上述したように、既存不適格の物件はさまざまなデメリットがあります。そのため、買い叩かれる可能性があります。

    高値売却を狙う際は、「優秀な不動産会社に仲介依頼する」「銀行から融資を受けなくても購入できる人を探す」などが考えられます。

5.まとめ

1. 既存不適格とは、「建設時に適法だったが、以降の法改正などで法不適合になった状態」を指す

2. 既存不適格建築物は、原則、増築や建替えを行う際には、法令に適合するよう建築しなければならない

3. 建築時に建築基準法に違反していた、もしくは建てた当初が法令に合っていても、その後の増改築工事などを行うことによって法令に合わなくなった建物建築物は「違法建築」となる

4. 建築基準法第42条により、原則幅員4m以上の道路の接道義務を満たさない土地は「再建築不可」となる

いかがでしたか。既存不適格の物件はデメリットも確かにありますが、不動産投資という観点で見るとメリットもあります。正しい知識を身につけ、こうした“歪み”を狙えば大きな利益を手にすることができますので、「既存不適格だからやめておこう」と最初から判断するのではなく、俯瞰して考えていただければと思います。

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