不動産投資において、銀行から融資を受けて物件を買い進めることは、規模を拡大する上でとても重要です。
始めてすぐであれば、個人属性で銀行が融資してくれる可能性もあるので、買い進めて行くこともできるかもしれません。
しかし、個人属性だけではいずれ融資にも限界が来ます。買い進めることができない状態になるのです。
そこで私が勧めるのは、拡大するために法人化を行い、金融機関から事業性融資(プロパーローン)を引いて買い進めていく方法です。言い換えれば、「不動産賃貸業」という事業に融資をして貰う方法です。
しかし、事業に融資をしてもらうためには、最低でも2期の黒字決算書が必要となります。 つまり銀行から評価される決算書をあらかじめ意識しておくべきなのです。
そこでこの記事では
- ・そもそも決算書とは何か?
- ・銀行から評価される、きれいな決算書とはどのようなものか?
- ・きれいな決算書を作るためには、具体的に何をすれば良いのか?
といった、事業性融資を引くために欠かせないポイントを解説いたします。
私もこれまで不動産投資を行い、現在では12棟の物件を所有し、年間家賃収入は5200万円程度となっています。
過度な規模拡大はしておりませんが、1法人で全ての物件を買い進めており全て事業性融資のオーバーローンで購入できています。
また、法人が主債務となっており、代表者の連帯保証はなしで融資してもらえていますので、金融機関に事業を評価されて融資を受けられる状況になっています。
このように、金融機関から評価されて事業性融資をしてもらえる秘訣としては、堅実に「きれいな決算書を作る」ことが欠かせません。
この記事をお読みになれば、銀行に評価される「きれいな決算書」の作り方が分かり、将来的に法人で投資規模を拡大していくことができるでしょう。
1.決算書とはなにか?
まずは決算書について簡単に解説します。 (ご存知の方は読み飛ばしていただいて結構です)
決算書で主に必要なものは2つ
- B/S(バランスシート:貸借対照表)
- P/L(損益計算書)
になります。
長期で継続して事業拡大を狙うためにはこの2つを意識しておく必要があります。
今回はこの中のB/S(バランスシート:貸借対照表)について解説いたします。
1-1.B/Sの構成
バランスシートは資産と負債をまとめて書き表したもので、表の左右が同じ数字になりバランスが取れているためにバランスシートと呼ばれます。
左側に資産を記載し、右側に負債を記載します。
上の図であれば左側と右側が共に1.05億とバランスが取れています。
2.「きれいな決算書」を作るには?
「きれいな決算書」とは財務状況が良いと銀行に判断してもらえる決算書です。
つまり、利益が出ていることや、融資を行っても問題がないと金融機関にわかって貰う必要があります。
2-1.金融機関はB/Sの「自己資本比率」に注目する
銀行が特に重要視するのが、バランスシートの中の「財務状態を表す指標」で、自己資本比率と呼ばれるものがあります。
私も不動産投資を行い、買い進めていく上で特にこだわっているのがこの「自己資本比率」です。
一般的には「純資産÷総資産」で算出され、事業の財務状態・健全性を測るために用いられます。
先程1-1で例として挙げたB/Sでは
- 自己資本比率=純資産(500万円)÷総資産(1.05億)×100=4.7%
となります。
よくニュースなどで「債務超過で金融機関が融資できないと判断している」という表現がありますが、債務超過は「B/Sの純資産がマイナスになっている状況」のことを指しています。
上のB/Sでは純資産が▲500万円となっており、金融機関は融資できないと判断します。
世の中で「企業が健全である」とされる自己資本比率の水準は20%前後であると言われています。
現在私は12棟の物件を所有し、全てオーバーローンで買い進めていますが、自己資本比率は60%程度となっており一般的な企業と比べても、自己資本比率が高い状態です。
自己資本比率の高さが、金融機関に評価されるポイントです。
2-2.融資を受けてレバレッジを効かせて買い進めると自己資本比率はどうなる?
通常のサラリーマンが人物評価で買い進めていくと、融資を受けられる限界が来ます。 どのようにB/Sの自己資本比率が変化していくでしょうか。
(ここでは簡単にするため、諸費用や税金などに関しては割愛していきます)
自己資金2000万円、7000万円の物件を購入、8000万円のオーバーローンした場合
この時点で純資産は1000万円です。
まだ融資はできると金融機関は判断します。
更に1億円の物件を購入、1.2億円のオーバーローンした場合
この時点で純資産は▲1000万円で債務超過です。
個人属性・年収によっては融資される可能性がありますが、純資産だけを見ると金融機関は次回の融資は難しいと判断します。
このように物件を融資で買い進めていくと、いずれ純資産がマイナスになり、債務超過になるので金融機関は融資が難しいと判断していくことになります。
不動産賃貸業は特に融資で事業を拡大して(物件を買い進めて)いくと、キャッシュフローや家賃収入は増えていきますが、自己資本比率がどんどん下がっていきバランスシートが悪化していく傾向にあります。
バランスシートの悪化に伴い、融資も悪化し、そのうち融資の限界が来て買い進めることができなくなります。
ですので、バランスシートを意識することが特に大事です。
3.自己資本比率を上げるためには?
自己資本比率の重要性はご理解いただけたと思いますが、買い進めていくと下がっていってしまうため、融資が厳しくなります。 しかし、拡大するためには追加融資を受ける必要があります。どのようにすればよいでしょうか。
3-1.物件の売却を織り交ぜて自己資金比率を上げる
カギは「売却を織り交ぜて、売却益で自己資金を増やす」ことです。
貸借対照表(BS)の資産に計上される不動産の金額は、単純に買値と経年での減価償却によって算出され計上されていきます。
つまり
- 割安な不動産を購入した
- 割高な不動産を購入した
どちらの場合でも帳簿上の資産として貸借対照表に計上されるということです。
- 例1)1億円の不動産Aを1億円の融資を引き購入。その後、1億円で売却できる物件Bを7000万円の融資を引き購入した
(計算を簡単にするため、売却の諸経費や税金は省きます)
この状態を貸借対照表(BS)にすると
この時点での自己資本比率は1000万円÷1.8億円×100=5.5%
しかし売却をすると
となります。
売却益が3000万円でましたので、現金が増えて合計4000万円。
自己資本比率は
- 4000万÷1.4億×100=28.5%
となります。
自己資本比率は売却によって5.5%から28.5%に跳ね上がりました。
企業が健全とされる自己資本比率が20%前後なので、28.5%となれば「とても健全な企業だ」と銀行も判断し融資が引けるようになります。
売却を混ぜることによって「キレイな決算書」となったわけです。
注意が必要なのは、売却することで利益が出ることが確定していても金融機関は含み益の評価はしてくれないことです。
実は私も、2013年の夏頃から不動産投資を開始し、物件を購入していますが売却も織り交ぜて自己資金を増やし、自己資本比率を高めています。
その結果、事業評価を得て事業性融資(プロパーローン)を引けるようになっています。
3-2.相場より割安で物件を買うことを意識する
ここまでで、融資を引くためには物件の売却も織り交ぜる必要があるとお伝えしました。
- 大事なのは「売却して儲かる物件」となります。そのためには、「相場より安い物件を買う」ことが大事になります。
もし、相場より高い物件を購入してしまったら、自己資本比率も下がりますし、売却しても更に下がるため注意が必要です。
3-3.利益が出るのであれば売却をためらわない
せっかく努力して、良い物件を探し購入したのに売却するなんてもったいないと感じる人もいるかも知れません。
しかし、より多くの物件を買うようになるために
- 「売却益が出るのであれば売却をためらわない」
ことも大事です。
利回りの良い物件であっても、家賃収入をためて自己資本比率を上げるためには一定の時間が必要となります。それまでに他の良い物件が見つかったとしても、融資されなければ物件を買い進めることができなくなります。
また、現在儲かる値段で売れたとしても、数年後に同じ金額で売れるとは限りません。 ですので、物件の売却を行うかどうかの明確な基準を持つことも大事です。
私の場合
- 「売却益が賃料収益の5年分を上回るようであれば売却」
と基準を設けています。
より多くの物件を購入し、家賃収入を得るための手段として売却を行うという考え方も大事になります。
まとめ
1.個人属性で買い進めると、いずれ融資の限界が来ます。拡大を続けていくためには金融機関から事業性を評価してもらい、融資を受ける必要があります。
2.事業性融資を引くためには、「きれいな決算書を意識して作ること」が大事です。特に「自己資本比率」を高めることを意識していきましょう。
3.自己資本比率を高めるためには、物件の売却を行い、自己資金を増やす必要があります。家賃収入を増やすために売却も必要という考え方も身につけましょう。
事業性融資を引けるようになると、金利が安く借りられるなどの大きなメリットもあります。是非きれいな決算書を作るということを行って下さい。
現在の市況は不動産投資に対する融資は厳しくなっていますが、事業性を見て評価してもらえれば話は全く異なってきます。
不動産投資で拡大を目指す方は、是非事業性融資の獲得を目指して下さい。