近年、日本では大型の地震や台風の影響で、地盤沈下や液状化などの被害が多数発生しています。みなさんも「自分が住んでいる家や所有している物件は大丈夫だろうか?」という不安をお持ちではないでしょうか。 今後も南海トラフ大地震をはじめ、大規模の災害が高確率で起こることが予想されており、「地盤」に対しての人々の意識は高まっています。
この記事では、
- ・地盤についての基礎知識
- ・地盤調査は必要か?
- ・地盤調査ではどのようなことをするのか
- ・地盤調査をしないで、気になる土地の地盤を調べる方法
について解説します。
地盤について知識を深めることは、物件探しの際に役立つでしょうし、天災における対処法を考えるきっかけにもなります。専門用語も多いため、難しそうにも感じてしまう地盤調査ですが、本記事ではまったく知識がない人を前提に、わかりやすく解説していきます。 今後はその重要性がさらに高まることが予想されるので、ぜひこの機会に学んでいただければと思います。
1.「地盤」とは?物件の安全性を左右する地盤と建物強度の関係
日本は「地震大国」といわれるほど地震が多く発生します。気象庁のデータベースによると、2011年3月に起きた東日本大震災以降でも、震度6弱以上の地震は26回、うち震度7以上は4回発生しています(2019年6月時点)。
また、気象庁は「南海トラフ地震(駿河湾から日向灘沖に かけてのプレート境界を震源域として、 過去に大きな被害をもたらしてきた大規模地震)」は、「いつ起きてもおかしくない」と警告し、緊急時の対応についてもアナウンスしています。
出典:https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nteq/leaflet_nteq.pdf
したがって、日本で不動産投資をする場合、地盤の問題は非常に重要です。
1-1.地盤の強度を表す「軟弱地盤」と「硬質地盤」の違いと特徴
地盤は、一般に「地表から深さ100メートルくらいまでの部分」を指すものとされています。
私たちは「地盤が良い」「地盤が悪い」などと日常的に使っていますが、専門的には「軟弱地盤」や「硬質地盤」と呼ばれたりしています。
・軟弱地盤
柔らかい砂や粘土でできており、水分を多く含んでいるため土の強度が低い地盤のことです。雨水や地下水が集まりやすい低地に多く見られます。具体的にいうと、以下のような地域です。
- ・坂道の下りきった場所
- ・水路、川、池の近く
- ・水に関係のある漢字を使っている(池、渡、流、湘、島、崎、泉、谷、田、鷺、萩など)
※傾向として、この漢字を使っている場所が低地であることが多いのですが、必ず低地というわけではありません。
・硬質地盤
岩盤や砂礫を多く含み、水分は軟弱地盤よりも少ないのが硬質地盤の特徴です。強度が高いため、建物は安定して建てられますし、地震の揺れに対しても揺れにくいという性質があります。「良好地盤」と呼ばれることもあります。
1-2. 地震被害の大きさを左右する「地盤」と「建物強度」
「地盤が悪いことによるリスク」と聞いたら、大半の人が「地震に弱い」と答えると思います。しかし、建物の振動特性も大きく関係しているため、地盤が悪くても地震の被害を受けないケースは多々あるのです。
実際、関東大地震の際の旧東京市内における「木造の被害率」と「土蔵(周りを泥と漆喰で塗った蔵)の被害率」を比較したところ、木造については地盤の悪い下町エリア(本所、浅草、深川など)で被害が大きかったのですが、土蔵については地盤が良いとされる山の手エリア(四谷、麻布、赤坂など)のほうが被害が大きかったのです(大崎順彦著「地震と建築」)。
つまり、「地盤が悪い=地震の被害が大きい」という単純な方程式は当てはまらないということです。
とはいえ、いまで考えると、戸建てやアパートのような木造建築は、やはり軟弱地盤のほうが被害が大きいのは確かです。一方、鉄筋コンクリート造のマンションだと、基礎が適切なら軟弱地盤が必ずしも悪い地盤とは限りません。
2.「地盤調査」を適正価格で!悪徳業者に騙されないための基礎知識
2-1.建物を建てる時、地盤調査は実質的に「義務」
地盤調査とは、対象となる地盤の上に建物を建てる場合の荷重や沈下に対する強度の強度を測定することです。
地盤調査は、設計施工基準において原則として行う必要があります。もし地盤調査を行わなかった場合は、住宅瑕疵担保保険(※1)に加入することができません。
ただし、木造2階建て以下で、かつ「現場調査チェックシート」の結果、「地盤調査の必要がない」と判断された場合、例外として地盤調査をする必要はありません。
※1:瑕疵担保履行法では、事業者に対して「住宅瑕疵担保保険」の加入が義務付けられています。住宅瑕疵担保保険とは、事業者が供給した住宅に瑕疵があった場合、その修補のための費用を補填できる保険です。
ただし、この保険に加入するためには、対象の住宅が保険法人の定める設計施工基準を満たしている必要があります。設計施工基準は建築基準法に基づいているものなので、実質的に地盤調査が義務付けられているといえるのです。
2-2.建て替えや売却時は?地盤調査が必要な時・要らない時
すでに地盤調査が完了した土地に住宅が建っている場合でも、建て直すときには再度地盤調査が義務付けられています。理由は、上記と同じように住宅瑕疵担保保険の加入に必要だからです。また、地盤の強さにはムラがある可能性もあり、建て直しのときにそうした箇所に建ててしまうと、瑕疵担保責任にかかわる事態になってしまうからです。
しかし、法律上では土地を売却する際の地盤調査は義務付けされていません。とはいえ、事前に地盤調査を行っていれば、土地に対する信頼度が上がるため、高額で売れる可能性が高まります。
2-3.ムダな地盤工事を防ぐ!地盤調査の流れとセカンドオピニオンの重要性
では、地盤調査ではどのようなことをするのか、その一例を紹介しましょう。
- ・事前に地形図などで対象となる土地の地質をおおまかに調査します
- ・GPS搭載の地盤調査機で地盤の状態を調べます
- ・現場から届いたデータの整合性を地質調査技士が確認します
- ・対象となる土地の改良判定が出た場合、工法を選択します
地盤調査の大半は、地盤改良工事会社(もしくは関連会社)が行っています。しかし、消費者は調査結果を渡され、言われるがままに地盤改良工事を実施するケースが多いようです。
地盤改良工事のコストは50万〜200万円といわれており、大きな負担になるということは否定できません。とはいえ、専門的な知識はないわけですから、「本当に地盤改良工事をすべきなのか」という判断は難しいものです。
そこで、第三者の立場から地盤調査がチェックする会社も出てきています。こうした会社を通すことで、無駄な地盤工事を行うコストを省くこともできます。
気になる方は、「地盤調査 セカンドオピニオン」と検索してみてください。
3. 自分で調べる!気になる土地の地盤を無料で調査する方法
3-1. アプリでチェック!無料で調査できる優秀アプリ2選
地盤情報はアプリでもチェックすることができます。いくつか紹介しましょう。
スマホで使える無料アプリ「地盤サポートマップ」
「地盤サポートマップ」というアプリでは、100万棟を超える地盤調査・解析実績により蓄積された地盤情報を閲覧できます。気になる土地の地盤情報はもちろん、自然災害のリスク、近隣の避難所の位置や学区などの生活情報を、いつでもどこでもスマートフォンで簡単に調べることができます。
ポイントは以下の3つです。
- ・日本全国の地盤の強さがわかる。また古い地図や過去の航空写真を見ていくことで、その土地の成り立ちなどがわかる。
- ・地震時の揺れやすさや液状化、土砂災害など、自然災害リスクを知ることができる。
- ・選んだエリアの学区・学校名や最寄りのバス停留所、病院、避難所の位置など暮らしに役立つ情報も手に入る
掲載されているデータはすべて実際に地盤調査が行われたスポットであるため、説得力は抜群と評判です。
無料で使用できるのもポイントです。
なお、地盤サポートマップは、アプリでなくとも普通にインターネットブラウザから登録不要で閲覧することができます。
いずれにせよ、かなり役立つツールなので、ぜひ使ってみることをおすすめします。
ホームページにも情報いっぱい「JIBUN no JIBAN」
JIBUN no JIBANは、「いつでも、どこでも、安全確認 今いる場所の地盤の様子を見える化するアプリ」です。ジバンスコアは、地盤ネット社調査に基づく地盤改良比率のほか、公共のデータに基づいた液状化、土砂災害、地震による揺れ、浸水のリスク5項目を各20点満点で評価し、スコア化されレーダーチャートを用いて最大100点満点で表示します。
現在地のスコアのほか、スマホのカメラと連動し、映像の中で100メートル先、300メートル先のスコアも表示します。今いる場所、どの方向が安全か、リアルタイムでわかります。
地盤改良比率の情報は、地盤ネット株式会社が調査、保有するデータをもとに、位置情報と組み合わせて計算されます。このデータは日々数百件蓄積されています。
ポイントとしては、以下のとおりです。
- ・今いるところの地盤情報を表示
- ・すべてのデバイス、OSで動作
- ・地震情報をビジュアルに表示
- ・登録者へ有益なお知らせ
(以上、アプリHP参照)
こちらも無料で使えるのが嬉しいポイントです。
3-2.公的機関のデータ「地震に関する地域危険度測定調査」で総合的な危険度を知ろう
購入予定、あるいは購入済みの物件が建つ地盤が良いのか悪いのかを確認するためには、どうすればいいのでしょうか。
正確な結果を求めるなら、後述する地盤調査が必要です。
ただ、大まかに理解したいとうことであれば、東京都の場合だと、東京都の都市整備局が発行している「地震に関する地域危険度測定調査」がおすすめです。ここでは都内の市街化区域の5177町丁目について、各地域における地震に関する危険性を、以下の3つに分けて測定しています。
- ・建物倒壊危険度 (建物倒壊の危険性)
- ・火災危険度 (火災の発生による延焼の危険性)
- ・総合危険度 (上記2指標に災害時活動困難度を加味して総合化したもの)
なお、地域危険度はそれぞれの危険度について、町丁目ごとの危険性の度合いを5つのランクに分けて、以下ように相対的に評価しています。
(出典:http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/home.htm)
建物の倒壊可能性だけでなく、火災の危険度や総合的な危険度の分析を発表されているため、東京で暮らしている方は、不動産投資家に限らずぜひ一度チェックしてみてください。
なお、東京以外は、内閣府が各自治体の防災情報を提供しているHPで「揺れやすさマップ」というものを出しているので確認してみましょう。
・【防災シミュレーター】各自治体防災情報 : 防災情報のページ – 内閣府
4.まとめ
1. 地盤は、一般に「地表から深さ100メートルくらいまでの部分」を指す。地盤は、大きく「軟弱地盤」と「硬質地盤」に分けることができ、特に前者の場合は対策が必要。
2. 「地盤が悪い=地震の被害が大きい」という単純な方程式は当てはまらない。ただ、戸建てやアパートのような木造建築は、やはり軟弱地盤のほうが被害が大きいのは確かである。一方、鉄筋コンクリート造のマンションだと、基礎が適切なら軟弱地盤が必ずしも悪い地盤とは限りらない。
3. 地盤調査とは、対象となる地盤の上に建物を建てる場合の荷重や沈下に対する強度の強度を測定すること。地盤調査は、設計施工基準において原則として行う必要がある。もし地盤調査を行わなかった場合は、住宅瑕疵担保保険に加入することができないため、事実上、義務化されているといえる、ただし、土地を売却する際の地盤調査は義務付けされていない。
4. 第三者の立場から地盤調査がチェックする会社も出ている。こうした会社を通すことで、無駄な地盤工事を行うコストを省くこともできる。
5. 地盤調査をせずに気になる土地の地盤を調べる方法としては、「地盤サポートマップ」「JIBUN no JIBAN」などの無料アプリ、東京都の場合は「地震に関する地域危険度測定調査」、それ以外は「揺れやすさマップ」などを活用する手がある
いかがでしたか。地盤に対して理解を深めることは不動産投資におけるリスクを減らすことに直結します。その重要性はまだまだ知られていませんが、今後「地盤調査を行って評価が良かった不動産が高値になる」という流れができる可能性は十分にあります。見逃せないテーマであることは確かなので、ぜひ知識を身につけていただければと思います。