不動産投資で融資を受けようと思っている人なら「プロパーローン」という用語を聞いたことがあるのではないでしょうか。
また、プロパーローンに関して以下のような情報を得たい人もいるでしょう。
- ・融資の相談に行ったら「プロパーローン」をすすめられたが、アパートローン・住宅ローンとの違いは何?メリット・デメリットを知りたい
- ・どんな金融機関で融資を受けられるのか知りたい
- ・審査基準や必要書類を知りたい
- ・相場を知りたい
- ・受けやすくするための条件を知りたい
- ・車やクレジットカードのローンが残っていても大丈夫なのか知りたい
- ・契約後、返済期間を変更できるのか知りたい
そこでこの記事では、
- ・住宅ローン、アパートローンとの違い
- ・プロパーローンのメリット、デメリット
- ・プロパーローンを提供する金融機関
- ・プロパーローン審査基準と通りやすい条件
- ・プロパーローン金利・融資の限度額・期間
- ・プロパーローンに関するQ&Aを解説
などプロパーローンに関する情報を不動産投資家でもあり、10冊以上の不動産投資に関する書籍に携わった経験を持つ、投資歴10年以上の著者が徹底解説します。
この記事を読むことで、プロパーローンの基礎知識はもちろん、好条件で融資をしてもらうためのポイント、融資を受ける際の注意点もわかります。
「融資を制するものが不動産投資を制す」といわれることもあるほど融資は重要なので、ぜひ本記事で知識を深めてください。
本記事が「不動産投資で安定収入を得たい!」という方のお役に立つことができれば幸いです。
「アパートローン」「住宅ローン」については下記の記事でも詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
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1.プロパーローンとは?住宅ローン・アパートローンとの違い
プロパーローンとは、「各金融機関が独自のプランで貸し出しているローン」のこと。プロパーローンの「プロパー(proper)」には、一般的な「適切な」という意味だけでなく、「本来の、固有の、独自の」という意味があります。これが転じて、和製英語的な言い回しの「プロパー」が使われるようになりました。
よく「中途入社の社員ではない新卒入社組」のことを「プロパー社員」と呼びますが、これもプロパーの典型例です。
プロパーローンの「プロパー」は「独自の」という意味で訳すとわかりやすいでしょう。「独自のローン」、つまり「各々の金融機関が独自のプランで貸し出しているローン」のことです。
1-1.住宅ローンとの違い・プロパーローンは「収益物件購入」に利用可
住宅ローンは、マイホーム(自宅用不動産)を購入するときに利用できます。マイホーム購入による経済成長は高度成長期以降の国策の一つであるため、住宅ローンの審査は緩く、金利は低いうえ、さまざまな特約が付いています。住宅ローンはあくまでマイホーム購入のための融資なので、収益物件を購入する際には利用できません。
また、多くの金融機関で扱っている一般的な住宅ローンでは、保証会社の保証をつけることが融資の条件の一つになっています。しかし、プロパーローンは保証会社の保証をつける必要がなく、金融機関独自の基準がクリアできれば融資が認められます。
1-2.アパートローンとの違い・プロパーローンは「オーダーメイド型」
収益物件購入の際に、住宅ローンは利用できませんが、収益物件の購入時に利用できるのが「アパートローン」と「プロパーローン」です。
アパートローンとプロパーローンは何が違うのでしょうか?
これらの違いは「パッケージ型なのか、オーダーメイド型なのか」ということ。
アパートローンの場合、借主の属性(年収、勤務先、勤続年数、自己資金など)と物件評価によって融資の可否、さらには融資期間、金利を判断します。このとき、「どういう条件ならこれくらい」と金融機関ごとに判断基準が概ね決まっています。そういう意味で、アパートローンは「パッケージ型」といえます。
一方、プロパーローンの場合、借主の属性や物件評価で審査をすることは同じですが、アパートローンのように一律に決まった基準はありません。金利や返済期間、借入金額の上限などは個々のケースに応じて変わってくるのです。そういう意味で、プロパーローンは「オーダーメイド型」といえます。
まとめていうと、
- ・プロパーローンは、アパートローンのように商品化されているわけではないため、明確な基準はない。
- ・申し込みが行われた案件ごとに審査されるため、金利・借入期間などの各種条件は案件ごとに異なる
ということになるでしょう。
こちらの記事では、銀行の不動産アパートローン引き締め状況や融資条件について解説しています。
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2.プロパーローンのメリット
プロパーローンのメリットは大きく以下の4つが挙げられます。
- 短期間で資産規模を拡大できる
- 保証料が必要なため初期費用が抑えられる
- アパートローンよりも条件がよくなることがある
- 融資の上限額、融資期間が決まっていない
2-1.短期間で資産規模を拡大できる
プロパーローンでは借入限度額の規定がないため、事業規模にレバレッジをかけられる可能性が高くなり、投資の絶好のタイミングを逃すことが少なくなります。これは住宅ローンやアパートローンでは実現できないことです。
2-2.保証料が必要ないため、初期費用が抑えられる
前述したように、プロパーローンは保証会社の保証をつける必要がなく、金融機関独自の基準がクリアできれば融資が認められます。そのため、初期費用を安く抑えることが可能です。
2-3.アパートローンよりも条件がよくなることがある
アパートローンと違い、プロパーローンの融資条件に一律に決まった基準はありません。そのため、プロパーローンの契約者には、アパートローンを受けるよりもさらに高い属性が求められます。
ただ、プロパーローンを受けられることができれば、信用度の高い融資先と認定されるため、アパートローンよりも低い金利で資金を調達することができる可能性があります。
2-4.融資の上限額、融資期間が決まっていない
上の内容と似ていますが、プロパーローンは「オーダーメイド型」なので、融資金額、融資期間も長く可能性があります。詳しくは「6.プロパーローンの融資の限度額・期間」をお読みください。
3.プロパーローンのデメリット
続いて、プロパーローンのデメリットを見ていきましょう。
- ・審査が厳しい
- ・連帯保証人が必要
- ・融資金額が高くなりがち
3-1.審査が厳しい
アパートローンでは借主の属性、物件評価に基づいて融資の可否や条件が決められます。しかしプロパーローンでは、自身のビジネスの状況によって条件が決められるため、誰でも受けられるというものではありません。属性や物件評価はもちろん、自己資金を多く持っている必要がありますし、借主の印象や人柄もチェックされるので、「審査が厳しい」ということは間違いないでしょう。とくに初心者のサラリーマンにとってはハードルが高いです。
3-2.連帯保証人が必要
住宅ローンと比較すると、保証会社の代わりに連帯保証人が必要になる可能性が高いのもデメリットでしょう。もし返済できなくなってしまった場合、連帯保証人が返済を引き継ぐことになりますので、「迷惑をかけたくない」というストレスがかかるといえます。
3-3.融資金額が高くなりがち
レバレッジを効かせて収益物件を買える可能性があるプロパーローンですが、多額のローンを組むということになりがちです。その分、空室リスク、入居者リスク、災害リスクなどで予想外の出費が重なったときに、自己負担が大きくなるので注意が必要です。
4.プロパーローンを提供する金融機関
プロパーローンに力を入れている金融機関は少ないですが、一部の都市銀行、地銀、信金、信組なども対応しているところはあるようです。ただし、対応している金融機関であっても、支店によっては利用できないところがあるので注意しましょう。
5.プロパーローンの通りやすい条件とは?
プロパーローンは住宅ローンやアパートローンに比べて審査が厳しいことは前述しましたが、以下のような、審査に通りやすい条件というものがあります。
- ・自己資金が多い
- ・属性が高い
- ・物件の評価が高い
5-1.自己資金が多い
「オーダーメイド型」と記載したように、プロパーローンは金融機関が特に大切にしたい顧客に対して個別メニューを用意するようなものです。やはり相手を選ぶので、多くの自己資金が求められます。端的にいえば、自己資金を多く準備することができる人は、プロパーローンの審査に通りやすいといえるでしょう。
5-2.属性が高い
借主の自己資金だけでなく、年収、勤務先などの属性も厳しくチェックされるのがプロパーローンです。また、遅延や滞納などの履歴も厳格にチェックされます。
5-3.物件の評価が高い
属性だけでなく、物件の担保価値、収益性を見られます。つまり、いくら借主の属性が良くても、物件評価が低ければプロパーローンを受けられない可能性はあるわけです。
6.プロパーローンの金利・融資の限度額・期間
これまで繰り返し述べてきたように、プロパーローンは「オーダーメイド型」であり、申し込みが行われた案件ごとに審査されるため、金利・借入期間などの各種条件は案件ごとに異なります。
そのため、「金利」や後述する「限度額」「期間」は金融機関、担当者、案件によって違うのですが、あくまで一例を紹介したいと思います。
ある金融機関では、以下の条件を満たす人がプロパーローンを利用できるようです。
- 【利用条件】
- ・当金融機関の会員もしくは会員たる資格を有する個人の方
※年齢が満20歳以上満65歳未満で、最終返済時の年齢が満80歳未満の方 - ・給与所得の方:勤続2年以上
- ・法人役員等給与所得者以外の方:3年以上
- ・安定した収入の見込まれる方(年間所得500万円以上で年間返済比率30%以内の方)
- ・団体信用生命保険に加入が認められる方
- 【使い道】
- ・土地及び住宅の購入資金(中古住宅を含む)
- ・住宅の新築・増改築資金
- ・他行住宅ローンの借換資金
- 【融資金額】
10万円以上8,000万円以下(1万円単位) - 【融資期間】
35年以内 - 【金利・返済方法】
変動金利型、3年固定金利選択型、5年固定金利選択型、10年固定金利型があり、毎月元利均等返済とし、ボーナス月増額返済の併用も可能。ただし、ボーナス返済部分の元金はご融資額の50%以内までとなる。 - 【手数料等】
- ・新規取扱手数料……3万3000円(担保評価手数料を含む)
- ・条件変更手数料
- 残高一括返済の場合、
借入後 3年以内……6600円
借入後 3年超5年以内……4400円
借入後 5年超7年以内……2200円
借入後 7年超……無料
※ただし、固定金利(選択)期間中は、元金返済額1000万円未満は3万3000円、1000万円以上は5万5000円 - 残高一部繰上返済の場合、
期間短縮(毎月返済額変更なし)……5500円
期間不変(毎月返済額変更)……6600円
上記以外の返済条件変更……6600円
※上記の情報はあくまで一例であり、借り手の属性や物件評価によって変動する可能性は十分にあります。
7.プロパーローンに関するQ&A
最後に、プロパーローンに関するよくある質問とその回答をいくつか紹介します。
プロパーローンは誰にでも提案するわけではありませんし、支店長など立場の高い人の判断で決まるので、承認される可能性は高いといえるでしょう。
延滞などをして信用情報に傷がついていないのなら、問題ないでしょう。そもそも連帯保証人の信用情報を確認するかどうかは、金融機関によって異なるはずです。
プロパーローンは経営者や大口預金先などの客層を主としているため、一般の人では難しいでしょう。
金融機関によってケースバイケースですが、住宅ローン・アパートローンなどのパッケージ型のローンに比べて時間がかかる傾向にあります。長いときは1カ月程度かかるケースもあります。
8.まとめ
1. プロパーローンとは「各々の金融機関が独自のプランで貸し出しているローン」のこと。
住宅ローン、アパートローンのように商品化されているわけではなく「オーダーメイド型」のため明確な基準はない。申し込みが行われた案件ごとに審査されるため、金利・借入期間などの各種条件は案件ごとに異なる
2. プロパーローンのメリット
- ・短期間で資産規模を拡大できる
- ・保証料が必要ないため、初期費用が抑えられる
- ・アパートローンよりも条件がよくなる可能性がある
- ・融資の上限額、融資期間が決まっていない
3. プロパーローンのデメリット
- ・審査が厳しい
- ・連帯保証人が必要
- ・融資金額が高くなりがち
4. プロパーローンの通りやすい条件
- ・自己資金が多い
- ・属性が高い
- ・物件の評価が高い
いかがでしたか。プロパーローンを利用できる人は限られていますが、その分条件が良くなるので、チャンスがあったら検討すべきでしょう。一般的な不動産投資ローンについては以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
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