不動産投資を少しでも勉強したことがある人なら、不動産投資にはさまざまなリスクがあることをご存じだと思います。
とはいえ、具体的に「どのようなケースで発生したのか」、そして「どうすれば解決できたのか」という流れでリスクを把握できている人は少ないように感じます。
そこで、今回は「不動産投資のリスク&解決策」をテーマに全3回にわたってケーススタディを紹介します。
この記事では、中古物件において避けては通れない「修繕リスク」とその解決方法について、代表的な3事例を紹介します。
具体的には、
- ・再生しようとして失敗
- ・管理会社から法外な請求
- ・経年劣化による大規模修繕
の3つです。
修繕リスクとその解決策についての知識は、不動産投資で成功するためには欠かせないものの一つです。ぜひご自身の投資に役立てていただければと思います。
なお、以下の記事では具体的なケーススタディを用いて、リスクの詳細と解決策を紹介しています。
不動産投資に限らず、あらゆる投資にはリスクがつきものです。 この記事では、不動産投資において挙げられるリスクの典型例を紹介します。 具体的には、以下の6つです。 ・空室リスク ・修繕リスク ・入居者リスク ・自然災害[…]
不動産投資を少しでも勉強したことがある人なら、不動産投資にはさまざまなリスクがあることをご存じだと思います。 とはいえ、具体的に「どのようなケースで発生したのか」、そして「どうすれば解決できたのか」という流れでリスクを把握できている人は少[…]
不動産投資を少しでも勉強したことがある人なら、不動産投資にはさまざまなリスクがあることをご存じだと思います。 とはいえ、具体的に「どのようなケースで発生したのか」、そして「どうすれば解決できたのか」という流れでリスクを把握できている人は少[…]
1. 【ケース1】 再生しようとして失敗
- 【投資家の属性】
- ・30代、男性 Tさん
- ・医療機器メーカー勤務、年収650万円
- ・千葉県在住、独身
- 【物件のスペック】
- ・千葉県野田市
- ・戸建て
- ・築40年
1-1. トラブル発生まで
35歳のTさんは、都内の中堅医療機器メーカーに勤めています。大学を卒業後、MRを事業とする会社で3年働き、その後今の会社に転職しました。仕事に対してはやりがいを持って取り組んできましたが、会社の業績は横ばい、もしくは右肩下がりの傾向で、段々と将来の不安が募るようになりました。
もともと情報感度が高く、SNSなども積極的に使っていたTさん。あるとき、「200万円で不動産買って、DIYして売ったら3倍の値段ついた!」というツイートを見かけます。
Tさんは不動産投資の知識はまったくなかったものの、「DIYか……自分でもできるかも」と思ったそうです。父親が建設業で働いていたこともあり、Tさんは子どものときから手を動かして物を作るのが好きでした。
将来への不安から何か投資を始めようと思っていたタイミングでもあったので、Tさんはツイートの主にメッセージを送り、一度会うことになりました。ちょうど年齢も近いこともあって意気投合し、不動産業者を紹介してもらえることになりました。
その不動産業者と面談をし、初めて案内されたのが物件価格300万円、千葉県野田市の築40年の戸建てです。自分でDIYをして価値を高めてから売却益を得る戦略でしたので、「どれだけ古くても構わないから物件価格は300万円以下、DIYで物件に通うことになるので、住んでいる千葉が望ましい」という条件で物件を探してもらいました。
条件に合致しているということもあり、Tさんは現金一括で購入しました。300万円以上の現金が一気になくなることには不安を感じましたが、ツイッターで知り合った人のように数年で数倍の価格で売れるのならいいか、と楽観的に思っていました。また、DIYの知識・経験を積めば、副業に生かすこともでき、単純に趣味にもつながったらいいなと考えていました。
このような流れで、Tさんはほぼ迷うことなく紹介された物件を購入しました。
しかし、築40年ということもあって物件の状態はかなりボロボロでした。室内はもちろん、躯体や屋根などにも問題があることが分かりました。ネットで調べたり知人に相談したりして何とか改善しようとしましたが、なかなかうまくいきません。得意だと思っていたDIYも、いざやってみると、準備するものが多かったり、どう直したらいいのかわからない部分があったり、仕上がりがよくなかったり…。想像とは違う結果にTさんは途方に暮れていました。
そうするうちに本業が忙しくなり、徐々に物件を放置するようになってしまったのです。
1-2. 解決方法
Tさんはローンを組んでいませんでしたし、空室の状態で購入したので、毎月発生するランニングコストは特にありません。しかし、固定資産税はかかりますし、放置しておくのはもったいないと思ったため、DIYを諦めて専門業者に発注することにしました。
結果的には、一部を「施主支給」(詳しくは後述)することでなるべくコストを下げたことにより、お金も時間も予定よりかかりましたが、なんとか再生することができました。
Tさんの教訓を挙げるならば、次のようになるでしょう。
- ・DIYですべてのリフォーム行うのは初心者には難しい
- ・クロスや塗装だけ、と自分でできる範囲でやるべき
- ・躯体や屋根、設備はプロに任せたほうがいい
1-3. 施主支給とは
前述した「施主支給」について補足しましょう。
施主支給とは、オーナーがリフォーム用の部材を支給して、それを使ってリフォームを行うことです。インターネットで購入して、工事の作業だけをリフォーム会社に依頼するわけです。通常、それらの部材はリフォーム会社が選んで用意しますが、その手間をオーナー側が負担することでコストを削減できます。
ただ、オーナーが部材の種類と量を決めなければならないため、リフォーム会社に一括して発注するよりも難易度は高いといえます。依頼するよりも難易度が高くなります。
また、施主支給と同じく、リフォームコストを抑える手段として「分離発注」もあります。
分離発注とは、工事の項目ごとに分けて発注を行う手法です。通常の依頼方法だと、リフォーム会社の担当者と打ち合わせをして、そこが窓口となり、クロス貼り、クッションフロア貼り、浴室工事、クリーニングなどを手配して工事を進めていきます。
しかし、分離発注の場合、工事は職人に直接発注を行うため、施主支給と同様、リフォームコストを削減することができます。
2. 【ケース2】 管理会社から法外な請求
- 【投資家の属性】
- ・40代、男性 Nさん
- ・製造業勤務、年収1100万円
- ・大阪府在住、妻、子ども1人の計3人
- 【物件のスペック】
- ・北海道札幌市
- ・RC12室
- ・3LDK
- ・築20年
2-1. トラブル発生まで
Nさんは京都大学出身のエリートビジネスパーソンです。20代のときから優秀な仕事ぶりでマネジメントの仕事を任され、家庭も築いて順風満帆な生活を送っていました。
Nさんが不動産投資を始めたきっかけは、少々言いづらいですが、不倫相手にかかる費用の工面のためです。たまたま出張で行った神戸のキャバクラで知り合った20代前半の女性に一目惚れしてしまい、その場で「とある企業の役員だ」と嘘をついてしまったNさん。お金の話を露骨にしてしまったせいか、その女性からは(表面的な)好意を受けるものの、引き返せなくなり、デートを重ねることになりました。高級レストラン・ホテル、そして気持ちの面でも揺らいできたNさんは、その関係を維持するために、よりたくさんのお金が必要だと感じました。
そんななか、たまたま会社にかかってきた不動産投資の営業電話をきっかけに、不動産投資に興味を持つようになり、インターネットを中心に調査を始めました。
いくつかの業者の説明を聞き、2018年に北海道札幌市にあるオーナーチェンジのファミリータイプの物件を購入しました。規模が大きくレバレッジが効くため、キャッシュフローを得やすいNさんの思考と合致しました。
また、北海道は転勤で数年住んでいたことがあり、まったくの無縁の地ではなかったことも決め手の一つでした。
購入した当初は、ほぼ満室稼働ということもあり、予定通りキャッシュフローを得ていたNさんですが、3年目くらいから状況が変わってきます。
その物件は、稼働率の良い物件ですが、部屋が広いせいか原状回復にお金がかかるのです。一度退去すると、なんと100万円以上の請求書が来ることもありました。そのため、せっかく得ていたキャッシュフローも原状回復でプラスマイナスゼロという状態になってしまいました。
2-2. 解決方法
それまでは、退去時にすべて管理会社に任せていました。しかし、そうしていると管理会社の関係性が強いリフォーム業者に依頼されてしまい、余計なお金を搾取されている可能性もあります。
そこでNさんは、管理会社の許可を得たうえで、自身の手配でリフォーム会社を選ぶことにしました。また、原状回復の際、「経年劣化」で何でも取り替えるのではなく、「クロスの貼り替え」など表装リフォームで済ませられないか検討しました。より理想的なのは「クリーニング」で同じクロスであっても、洗うことで原状回復できないかという判断を行うようにしました。これを遠隔で行うためには、リフォーム業者としっかりした連携ができなくてはいけません。
くわえて、あまりにコストばかりを重視しすぎると、客付けに支障が出てしまいます。そのため、管理会社に相談して意見を取り入れることを心がけました。
なお、Nさんのように物件と住まいが離れている場合のリフォーム会社の選び方ですが、先輩大家さんや地元の大家さんなど、信頼できる大家さんからの紹介で選んだほうが良いでしょう。そのためには、その地域で不動産投資をしている大家さんのコミュニティに参加するのがお勧めです。そのほか、インターネットで調べて、複数の業者から相見積もりをとって決める方法もあります。その場合は値段だけでなく、工事内容もきちんと把握して判断する必要があります。
3. 【ケース3】経年劣化による大規模修繕
- 【投資家の属性】
- ・50代、男性 Mさん
- ・専業大
- ・群馬県在住、妻、子ども2人の計4人
- 【物件のスペック】
- ・群馬県高崎市
- ・RC16室
- ・3LDK
- ・築40年
3-1. トラブル発生まで
Mさんは、専業大家として6年目です。きっかけは、リーマンショックの影響を受けて不動産価格が安くなったころに、『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著)を読んで不動産投資に興味を持ち、ちょうど相談していた不動産業者から関東圏内の一棟マンションを紹介され、2棟購入していました。ほぼフルローンで購入していましたが、利回り15%以上ということもあり、十分に手元にキャッシュが残る状況でした。
そういったこともあり、この群馬県高崎市の物件も「これまで上手に運用していたんだから、大丈夫だろう」ということで親から相続しました。
しかし、相続して3年後に経年劣化による大規模修繕が発生します。それまでは偶然、大規模修繕してから間もない物件を購入していたので、大規模修繕を軽視していたMさん。しかし屋上防水と外壁塗装の見積もりが2000万円以上ということを知らされ、本格的に焦り始めます。その後すぐさま「これは、とても払える金額ではない」と途方に暮れることになります。
3-2. 解決方法
このままでは破綻してしまうと危機感を抱いたMさんは、2000万円以上の見積もりを一旦保留し、相見積もりをかけました。その結果、良心的な会社を見つけることができ、最初のリフォーム会社が出してきた2000万円の約3分の2にあたる1200万円で同じリフォームを依頼できることになりました。
リフォーム資金は地元の信用金庫に相談し、保証会社付きの融資を受けることができました。
- この事例の教訓は、
- ・屋上防水は工法や仕様によって金額が変わってくるので、工法や仕様、保証の内容を確認しておく
- ・中古物件を購入する場合、大規模修繕がいつなのかを必ず確認したうえで購入する。数年以内に大規模修繕しなければならないなら、それもふまえて価格設定を打診する
- ということになるでしょう。
まとめ
1.よくある修繕リスクの例として、「再生しようとして失敗」「管理会社から法外な請求」「経年劣化による大規模修繕」の3点が挙げられる
2.上記の教訓をまとめると、主に以下のとおりである。
- ・DIYで行うのは初心者には難しい
- ・クロスや塗装だけ、と自分でできる範囲でやるべき
- ・躯体や屋根、設備はプロに任せたほうがいい
- ・何でも「経年劣化」で取り替えるのではなく、表装リフォームで修繕
- ・より理想的なのは「クリーニング」で済ませられないか、ということ
- ・遠隔にある物件の場合、リフォーム会社を選ぶときは信頼できる大家さんからの紹介が推奨
- ・屋上防水は工法や仕様によって金額が変わってくるので、工法や仕様、保証の内容を確認しておく
- ・中古物件を購入する場合、大規模修繕がいつなのかを必ず確認したうえで購入する。数年以内に大規模修繕しなければならないなら、それもふまえて価格設定を打診する
いかがでしたか。不動産投資において、修繕リスクは一部の新築物件以外では避けては通れない問題です。しかし、不動産投資の魅力は「どういったリスクがあるのかが過去の事例から明らかになっており、その対処法も同じく公開されているということ」です。
したがって、この記事に書かれているような事例を学ぶことで、自身のリスク回避に大いに役立てていただくことが可能だといえます。
修繕リスクとその解決策についての知識は、不動産投資で成功するためには欠かせないものの一つです。ぜひご自身の投資に役立てていただければと思います。
なお、以下の記事では具体的なケーススタディを用いて、リスクの詳細と解決策を紹介しています。
不動産投資に限らず、あらゆる投資にはリスクがつきものです。 この記事では、不動産投資において挙げられるリスクの典型例を紹介します。 具体的には、以下の6つです。 ・空室リスク ・修繕リスク ・入居者リスク ・自然災害[…]
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