融資を受けて不動産を購入しようと考えている人のなかには、「不動産担保ローン」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。とはいえ、「メリット・デメリット」「住宅ローンとの違い」「金利相場、審査条件・期間」など不動産担保ローンの知識が十分でないという人も多いはずです。
さらに、以下のような情報を得たい人もいるでしょう。
- ・投資目的でも利用が可能なのか
- ・自己資金が少なくても融資してもらえるのか
- ・住宅ローンや車のローンと併用可能か
- ・一括返済や借り換えは可能なのか
- ・両親名義の不動産を担保にした場合、両親以外の保証人が必要か
そこでこの記事では、
- ・不動産担保ローンのメリット、デメリット
- ・不動産担保ローンの金利
- ・融資が受けられる期間と審査基準
- ・必要書類と申込方法
- ・不動産担保ローンを提供する金融機関
- ・不動産担保ローンに関するQ&A
など不動産担保ローンに関する情報を初心者にもわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、所有する不動産を有効活用しながらローンを受けることができます。他のローンではないメリットもありますので、知識を身につけるだけでも選択肢の幅が広がります。
本記事が「所有している不動産を有効活用したい!」という方のお役に立つことができれば幸いです。
1.不動産担保ローンとは?
不動産担保ローンとは、文字どおり「不動産を担保にしてお金を借りるローン」を指します。一般的には、用途の規定がないフリーローンが主流ではあるものの、ビジネスの運転資金といった事業性資金には使えないケースもよくあります。
また、借主=物件の所有者でなければ借りられない不動産担保ローンもあれば、両親や配偶者などの家族名義、あるいは法人が所有している法人名義でも借りられる不動産担保ローンもあります。
そもそも担保とは、万が一、債務者がローンの返済が困難になった場合を想定して、あらかじめ債権者に提供しておくもの。不動産のような安定した担保があると「損失をカバーできる」という保証になるので、低金利で高額な融資を長期にわたり受けられる可能性があります。
2.不動産担保ローンのメリット・デメリット
では、不動産担保ローンにはどのような長所・短所があるのか見ていきましょう。
2-1.メリット(1)高額な融資が受けられる
個人向けの無担保のカードローンや法人向けのビジネスローンと比較すると、高額な融資を受けることができます。
参考までに
- ・カードローン、ビジネスローンは多いところでも「最大1000万円」
- ※カードローンの場合、1回あたりの平均的な借入金額は1~2万円未満
- ・不動産担保ローンは「最大10億円」という金融機関もある
となっています。
2-2.メリット(2)金利が低い
不動産という評価の高い担保を入れることで、個人向けの無担保のカードローンや法人向けのビジネスローンと比較すると、比較的低い金利で借りることができます。ただし住宅ローンの金利よりは高めになります。
参考までに、
- ・カードローンの平均は「14%」(大手5社の平均)
- ・ビジネスローンの平均は「12.1%」(日本貸金業協会:貸金業者の経営実態等に関する調査結果報告)
- ・不動産担保ローンは、銀行を中心とした金融機関では「1%~9%」、ノンバンクでは「3%~15%」
となっています。
2-3.メリット(3)融資期間が長い
こちらもカードローンやビジネスローンと比較すると、不動産担保ローンのほうが有利な条件になります。
参考までに、
- ・カードローンの返済期間は「半年以内が約5割」、「1年以上が約2割」「それ以上が3割」
- ・ビジネスローンの期間は「最長5〜10年」が一般的
- ・不動産担保ローンは、「最長35年」という金融機関もある
となっています。
2-4.デメリット(1)審査に時間がかかる
個人向けの無担保ローンであれば、数分で審査が完了し、即日融資ということもあります。しかし、不動産担保ローンの場合、借主の年収や属性などに加え、不動産の審査もしなければなりません。そのため、審査に時間がかかってしまうのです。実際に融資が実行されるまでには、ノンバンク系で1週間から最短3日、銀行系で数週間から1カ月程度はかかると考えたほうがいいでしょう。
2-5.デメリット(2)手数料がかかる
不動産担保ローンの場合、利息以外に事務手数料、不動産鑑定費用、印紙代、抵当権の登記費用といったコストがかかります。これらは借入金額によって異なりますが、数十万円かかる場合もあります。
2-6.デメリット(3)返済不能になると不動産が差し押さえられる
担保にしている以上当たり前ではありますが、万が一ローンの返済が困難になった場合、担保にしている不動産は差し押さえられます。そして金融機関は担保にした不動産を売却し、その売却代金から貸したお金と利息を回収するわけです。
2-7.デメリット(4)最悪の場合、自己破産も!?
担保に入れた不動産を売却したとしても、その売却代金がローンの返済金額に満たないときは担保割れとなります。この場合、再度ローンを組むなどして残額を返済していかなければなりません。そして、それでも返済が難しい場合、自己破産をせざるをえない可能性もあります。
3.不動産担保ローンの金利
不動産担保ローンの金利は金融機関によって異なります。一般的に、審査基準が厳しい銀行は金利が低くなりますが、審査のハードルが低いノンバンクなどは金利が高めに設定されます。
前述したように、不動産担保ローンは、銀行を中心とした金融機関では「1%~9%」、ノンバンクでは「3%~15%」となっています。
- ・楽天銀行の場合、
(2020年8月契約)年0.68%~年9.44%(5年見直し)
(2020年9月契約)年0.71%~年9.47%(5年見直し)
です。 - ・住信SBIネット銀行の場合、年2.95%~8.9%(2020年9月1日時点)です。
- ・東京スター銀行の場合、年0.85%~8.35%(2020年9月1日時点)です。
- ・オリックス銀行の場合、
固定金利期間特約付変動金利型(3年固定特約型)……3.3%
固定金利期間特約付変動金利型(5年固定特約型)……3.5%
変動金利型……3.675%
※いずれも2020年9月1日時点
不動産投資に関する他のローンの金利に関してはこちらの記事をご参照ください。
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4.不動産担保ローンの期間と審査基準
次に、不動産担保ローンの融資が受けられる期間と審査基準を見ていきましょう。
4-1.借入期間
不動産担保ローンの期間は、金利と同様、金融機関によって異なります。一般的な借入期間は最大20〜35年です。最も多いのが25年というパターンです。
4-2.審査基準
審査基準は、「申込者本人」と「担保となる不動産」の2つで判断されます。
申込者本人の場合、以下の点をチェックされます。
- ・延滞履歴や破産のような金融事故が過去にないか
- ・勤続年数、勤務先、年収
- ・完済時の年齢(多くの金融機関が完済時年齢を80歳前後としている)
- ・返済負担率(30%程度だと審査に通りやすい)
- ・連帯保証人(担保となる不動産の権利関係によって必要な場合がある)
申込者の評価についていえば、これは融資全般に共通することですが、より安定性の高い職業、高額で安定的な給与を得ている人ほど、高く評価されます。
担保となる不動産の場合、以下の点をチェックされます。
- 【土地の評価】
- ・公示地価(国土交通省)
- ・基準地価(都道府県)
- ・路線価(相続税路線価:国税庁)
- ・固定資産税評価額(市町村)
【建物の評価】
建物の評価方法は、以下のような評価方法が一般的です。
建物の評価額の算出方法=再調達価格×残存年数÷法定耐用年数
※再調達価格とは、同等の建物を建築する場合に要する建築費のこと
※法定耐用年数とは、税法上の減価償却を計算する際に「その建物が何年くらい利用に耐えられるのか」を定めた年数のこと。木造なら22年、鉄筋コンクリート(RC)造なら47年などと構造や用途によって耐用年数は異なります。
土地の評価、建物の評価共に各金融機関の独自基準があります。そのため同じ不動産であっても金融機関によって評価が変わるケースがあります。
不動産投資に関する他のローンの審査に関しては、こちらの記事をご参照ください。
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5.不動産担保ローンの必要書類・申込方法
不動産担保ローンの審査を受ける際に必要となる書類は以下のとおりです。
- ・本人確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- ・印鑑証明書
- ・納税証明書、固定資産税納付書
- ・収入証明書
- ・不動産登記簿謄本(担保不動産が確認できるもの)
- ・ローン残高証明書
- ・商業登記謄本、決算書類、事業計画書など(法人の場合)
なお、不動産担保ローンの申込は主に以下の流れで進みます。
実際に融資が実行されるまでには、1〜2週間程度はかかるのが一般的です。
6.不動産担保ローンはどこで借りられるのか?提供する金融機関
不動産担保ローンを提供している金融機関は、銀行、信託銀行、信用金庫や信用組合、ノンバンクなどさまざまです。
ただ、取扱金額や件数から見ると、銀行とノンバンクが大きいため、この2つが主な選択肢となるでしょう。
以下では、銀行とノンバンクの特徴を見ていきます。
6-1.銀行
銀行と一口にいっても、都市銀行、地方銀行、ネット銀行、信託銀行などさまざまであり、すべての銀行が不動産担保ローンを扱っているわけではありません。
特徴としては、一言でいうなら「審査は厳しいが、金利が低い」ということです。
申込者本人、担保となる不動産の審査をするという意味ではノンバンクと変わらないのですが、条件の設定が銀行のほうが厳しいといえます。しかしその分、借入金利が比較的割安に設定されていることがメリットといえるでしょう。
6-2.ノンバンク
ノンバンクとは、銀行以外の金融機関のことで、預金の受け入れを行わずに、お金を貸すなどの与信業務に特化した金融機関のことを指します。
ノンバンクの特徴は、「銀行の不動産担保ローンのメリットとデメリットが逆」だと考えればわかりやすいです。つまり、「審査は比較的緩いが、金利が高い」ということです。
7.不動産担保ローンに関するQ&A
ここからは、融資を受けるにあたって、皆さんの疑問にお答えします。
不動産担保ローンでは、審査の条件や借入金利にかなりのバラつきがあります。たとえ銀行であっても、ノンバンクと同じレベルの金利だったり、ローンが実行されるまでの事務手数料が高かったりすることもあります。
また、融資件数の実績がそれほど多くなく、不動産の担保価値を査定するノウハウに乏しい金融機関もあります。
したがって、きちんと情報収集し、実際に借りたことがあるユーザーのネット上の口コミや評判も参考にしましょう。また、比較サイトのなかには金融機関からお金をもらってランキング上位にしているところも可能性としてはあるため、比較サイトを見る際にも複数比較をすることをおすすめします。
以下の条件に当てはまる人は通りにくいといえるでしょう。
- ・書類に不備がある
- ・申込者本人の信用情報に問題がある
- ・住宅ローンの残債が残っている(ただし「住宅ローンや車のローンと併用可能でしょうか?」に詳しく記載していますが、不動産評価額に余力があれば、審査に通る可能性は十分にあります)
残念ながら十分にあります。仮審査はあくまで最低限の項目を審査しただけであり、本審査ですべての要件を精査した結果、落ちることはありえます。
「所有不動産を担保に入れてお金を借りる」という点は共通していますが、不動産担保ローンは資金使途が原則自由な不動産担保型「フリーローン」となります。一方、不動産投資ローンは所有するアパートやマンションなど「収益物件を担保に不動産賃貸業の事業資金を受けるためのローン」となります。
前項で説明した通り、さまざまな資金使途に使えるため、不動産担保ローンを投資の資金に充てることも可能です。ただし、一部「事業性資金には使用不可」と定めている金融機関もあります。
不動産投資に関するローンについては他記事でもご紹介しています。どうぞご参照ください。
・未経験だけどこれから不動産投資を始めたい ・貯蓄が少ないけどローンを組んで不動産投資をしたい こうした思いを持つ方は非常に多くいます。また、 ・不動産投資のローンって、住宅ローンとどう違うの? ・金利や年数・審[…]
まとまった自己資金は必要ありませんが、諸費用が発生します。融資の実行日に2%~3%の事務手数料が融資額から差し引かれて振り込まれます。その他、印紙代、振込手数料、登記費用(実費)が必要になります。
基本的に併用は可能です。
住宅ローンを組む際には、住宅ローンを融資する金融機関が、該当不動産に対して第一抵当権を設定します。万が一、債務者が返済不可能になったら、金融機関はその抵当権を行使することで、担保不動産を売却して債権回収します。
そのため不動産担保ローンを併用するためには「住宅ローンの返済がある程度進んでいること」が第一の条件となります。金融機関によって「ローン残高が購入時の約6割以下」といった具体的な条件があるケースもあります。条件に当てはまれば、第二抵当権であっても不動産担保ローンを受けることができます。
一括返済は可能ですが手数料がかかる場合があります。また、不動産担保ローンを使って借り換えをすることもできます(条件は各金融機関によって変わります)。不動産担保ローンからだけでなく、無担保ローンや住宅ローンからの借り換えであっても、返済負担の軽減や資金繰りの改善に期待できる可能性があります。
この場合、原則両親のみ連帯保証が必要です。
まとめ
1. 不動産担保ローンとは、「不動産を担保にしてお金を借りるローン」のこと。一般的には、用途の規定がないフリーローンが主流ではあるものの、ビジネスの運転資金といった事業性資金には使えないケースもある
2. 不動産担保ローンのメリットは3つ
- ・高額な融資が受けられる
- ・金利が低い
- ・融資期間が長い
3. 不動産担保ローンのデメリットは4つ
- ・審査に時間がかかる
- ・手数料がかかる
- ・返済不能になると不動産が差し押さえられる
- ・最悪の場合自己破産になる
4. 不動産担保ローンを利用できる金融機関には、大きく「銀行系」と「ノンバンク系」があり、それぞれ特徴が異なる。ただ例外も多々あるので、しっかり調べることが必要
5. 不動産担保ローンが通りにくい人の条件
- ・書類に不備がある
- ・申込者本人の信用情報に問題がある
- ・住宅ローンの残債が残っている
いかがでしたか。好条件で融資を受けられる可能性がある不動産担保ローンですが、万が一返済が困難になった際には担保にした不動産が差し押さえられてしまうというリスクもあります。利用する際は条件を含め、慎重に検討しましょう。