不動産所得の経費について知りたい方は、確定申告をする際に正しく申告しつつ、余分な税金を払いたくないと考えている方が多いかと思います。
「できるだけ節税をしたい」「でもこれは経費になるのだろうか?」といった疑問や不安を持って、この記事を見つけたかもしれません。
そこで当記事では、節税についてよく知りたいという方のために、
- ・不動産投資と節税の関係
- ・経費についての考え方
- ・キャッシュを増やすための不動産所得の計算
についてもお伝えしていきます。
当記事では経費について細かな情報も網羅し、漏れなく経費を申告できるようにするための項目とそれぞれの説明をしていきます。また、経費になるかどうかで質問の多い項目に関してもまとめていますので、経費を正しく計上し、損をしない確定申告ができるようになります。また、「手元にできるだけ多くの現金を残すための考え方」が理解できるようになるでしょう。
1.不動産所得で経費にあげられるもの
不動産所得において経費に挙げられるものについては、国税庁のホームページにも記載があります。
参考:国税庁「No.2210 やさしい必要経費の知識 」
必要経費に算入できる金額について簡単にまとめられていますが、範囲が広くイメージしにくい部分もあるかと思います。 ここからは経費として計上できるかどうかを、より具体的にまとめていきます。
1-1.必要経費として計上できるものとできないもの
不動産所得とは「不動産等を貸し付ける事により生じる所得」になります。なので、不動産所得を得る為にかかる費用は必要経費としてみなされます。
具体的に1つ1つチェックしていきましょう。
・減価償却費
不動産の取得価額を、耐用期間に応じて毎年費用化したものになります。 建物などの償却方法は耐用年数に従って計算できますが、10万円超から20万円未満のものは3年間で経費計上ができる事を覚えておきましょう。
・修繕費
不動産の維持、保全のために支出する修理代になります。修理代というと、その年の経費になるイメージがありますが、金額が大きく、修理して原状に戻す以上に、資産の価値が高まるような支出は「資本的支出」とみなされ、減価償却対象となり、数年に渡って経費計上できる場合があります。
・損害保険料
不測の損害に備える火災保険料などが該当します。ただし、貯蓄性や運用性の高い部分に関しては資産計上が必要になります。
・租税公課
固定資産税や事業税・印紙税などの不動産賃貸業に伴って支出する物は経費算入できます。ただし、遅延金などの罰金に関しては経費算入する事ができません。
・人件費
使用人や専従者の給与が該当します。家族に給与を支払う場合は、事業従事の実態があれば経費算入ができます。
・借入金利息
銀行への融資返済の全額は経費になりません。金利部分のみ経費として計上でき、元金返済分は経費とはなりません。
・管理費
業者に支払う費用も含めて経費算入が可能です。
1-2.少し分かりにくい修繕費と資本的支出の区分について
不動産投資は中長期に及ぶ投資になりますので、修繕費とは必ず向き合う必要があります。この修繕費について、修繕費と資本的支出に区分されます。
この区分について簡単にまとめていきます。
修繕費とは、原状回復させるために要した費用になります。例えば、壊れた壁の修繕などが該当します。資産価値が高まるというよりも、下がってしまった価値を元に戻す為に使われる支出になり、経費計上可能となります。
また、20万円未満の修理や、3年以内の周期で行われる修繕に関しても、修繕費として経費計上できます。 資本的支出とは、原状回復ではなく、価値を高めるために支払った費用になります。耐震補強や防水加工など、もともとの資産にプラスの価値を与えたとみなされる支出は資本的支出とみなされます。
どちらも経費計上をする事ができるのですが、修繕費はその年にまとめて計上するのに対して、資本的支出は耐用年数に応じて減価償却する事で、数年に渡って経費計上を続ける必要があります。
参考:国税庁 「第8節 資本的支出と修繕費 」
1-3.これは経費として申告できる?素朴な疑問
経費として計上できるか判断が難しい事例をまとめていきます。
1-3-1.経費を集計するためのパソコン代は?
経費を集計する為のパソコン代は、経費計上する事ができます。
同様に、物件検索の為のインターネット費用、管理会社とやり取りした通話料なども経費として計上できます。ただし、プライベートでも利用している場合は事業用として利用している割合だけを経費として割り振る必要があります。
1-3-2.物件視察などに使う車の減価償却は?
物件視察に使う車も経費計上できます。交通費としてガソリン代、駐車場代、保険料等も経費にする事ができます。 車の場合、インターネット費用などと同じく自家用車としても利用している場合は、事業用の部分だけ経費として割り振る必要があります。
1-3-3.物件情報に掲載するための写真撮影に使用するデジカメは?
物件情報に掲載する写真撮影に使用するカメラも経費として認められます。ただし、10万円を超えるような高額なカメラの場合は減価償却費で計上する必要があります。
2.そもそもの不動産所得の計算方法
改めて、不動産所得の計算方法を確認しておきましょう。
2-1.不動産所得とは
不動産所得とは、所有している不動産から発生する家賃収入、賃料収入から必要経費を差し引いた部分をいいます。
2-2.不動産所得の計算方法
不動産所得の計算方法は非常にシンプルです。
- 不動産所得=家賃収入の総額―必要経費
この為、収入が同じであれば、きちんと必要経費を計上する事で、不動産所得は低くなりますから、税金の支払額が減るという事になります。
3.不動産投資家の人が覚えておくべき経費(節税)に関する考え方とは
不動産投資をする人の目的は、「利益を増やして現金を手元に残すこと」です。その一つの手段が「節税」となります。つまり、経費をしっかりと計上して税金の支払いを減らすことで、結果として手元の現金を増やしていくことができます。
ですので、「税金を減らすこと」が最終目的ではなく、利益を最大化するのが目的であるという事を念頭において節税に努めましょう。
言い換えれば、節税をするという事は、あくまでも「黒字を圧縮する」ための手段です。仮に、節税を意識しすぎるあまり「赤字」となってしまっては、本来の目的である「利益を最大化すること」から外れてしまいます。利益を減らしすぎて不動産投資が拡大できないのであっては「本末転倒」と言わざるを得ません。
実際、不動産投資を拡大していく為には、銀行からの信頼を得て、大きな融資を有利な条件で受ける事が必要不可欠です。しかし、赤字決算が続いていると銀行からの評価は下がります。
つまり、黒字で利益をしっかりとだし、きちんと納税する事で、銀行からの信頼を得て融資を受けることができます。融資により不動産を買い進め、より利益を出していくことで、「支払った税金以上の大きな利益を生み出す事ができる」という視点を忘れてはいけません。
「節税=利益を減らす行為」なので、行き過ぎた節税は銀行の信頼を得られません。特に事業の拡大段階においては納税する事で銀行の信頼を獲得し、融資を増やしていくという事も大切です。
4.まとめ
- 1. 不動産所得を得る為に必要な支出は、基本的に経費として計上できます。ただし、プライベートでも利用している経費に関しては、事業に利用している割合だけを計上するようにしましょう。
- 2. 不動産投資の目的は、「手元に残る現金を増やすこと」になります。その為、計上できる経費はしっかりと計上し、無駄な支出をしないようにしましょう。
- 3.ただし、節税だけを目的にしないようにしましょう。時にはしっかりと黒字を計上し、納税する事によって金融機関から信用を得る事が大切です。大きな金額を、有利な条件で融資を受ける事によって、不動産投資の事業規模を拡大していきましょう。
不動産投資家にとって、税金は避ける事ができない支出の1つになります。なので、支出を減らす為に、経費に関しては常に確認する事が重要です。ただ、最初から節税だけに注力せず、きちんとした黒字経営を続けていき、銀行からの融資額を増やして事業規模を拡大する事も大切にしていきましょう。
そうする事で、不動産投資から得られる利益を最大化する事ができるのです。きちんと利益をだし、適切な経費計上をする事によって、クリーンな不動産投資をしていきましょう。
その他に確定申告に関係する記事もあります。 是非確認して、知識を深めましょう。
建物の減価償却について
「建物の減価償却が丸分かり!節税のための基礎と計算する4つの知識」
家賃収入がある場合の確定申告について
「サラリーマン大家向け:家賃収入がある場合の確定申告4つのポイント」