【税理士監修】相続した不動産を売却するときに知っておきたい節税法5選

相続により土地や家を譲り受けても、住む予定がなく、賃貸などで活用する予定もない。このまま持っていても固定資産税や都市計画税がかかるだけなので、売却したい……このような考えを持つ方もいらっしゃるでしょう。

ただし、そうした場合、かかる税金の種類や節税方法など不安に感じると思います。不動産売却は多額のお金が動くため、成功と失敗では大きな差が生まれます。また売却の場合、相続や資金繰りなど緊急を要する事情によって早急な対応が求められることもあるわけですが、そのときに一から知識を身につけるのは、時間的にも精神的にも難しいものがあるでしょう。

そこでこの記事では、

  • 「相続前」と「相続後」、売却するならどっちがいい?
  • 相続不動産の売却時にかかる税金・諸経費
  • 売却時に支払う税金を徹底的に節税する方法

など、相続した不動産を売却する際に損しないために必要な知識と手続きを、相続税対策・節税に精通した浅野税務会計事務所の浅野和治税理士の監修のもと、不動産売却経験の筆者が不動産売却時に知っておくべきポイン徹底的に解説します。

また、相続した不動産の処理については、人によって要望が変わるものです。

  • 自分の生活で忙しいから、相続した不動産の売却に関する手間をかけたくない方
  • 手残りのお金もバランス良く考えたい

といった要望に沿った対応方法も紹介します。

「自分はまだ売却のことは知らないで大丈夫」と思わず、不動産所有者なら誰しもが最低限の知識を持っておくことをおすすめします。この記事があなたの資産を守るための不安の解消につながれば幸いです。

尚、以下の記事では、不動産を相続する場合にかかる相続税について、詳しく説明しています。こちらも併せてご覧ください。

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1.相続した不動産を売却するメリット・デメリット

相続した不動産を売却するメリット・デメリット

この記事を読まれている方は相続した不動産の売却を検討しているかもしれませんが、そもそもどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

1-1.「相続後」に売却するメリット・デメリット

不動産を相続したのちに売却するメリットは「要件に該当すると相続税が軽減される」ことです。これは後ほど詳しく解説しますが、例えば相続税が発生し、3年10カ月以内の売却なら譲渡所得課税の負担が軽くなります。

一方、デメリットもあります。それは「相続した不動産が共有名義なら売却手続きが複雑」ということです。相続人が1人だけであれば、ただ単に売却の手続きが進むだけなのですが、複数の相続人が共有している不動産の場合、売却の手続きの際に、相続人全員がかかわる必要があります。このとき1人でも売却を反対すると、手続きがスムーズに進まないだけでなく、親族同士が争う「争続」に発展してしまうリスクもあります。

1-2.「相続前」に売却するメリット・デメリット

では、相続する前、つまり被相続人が生きているうちに不動産を売却する場合のメリット・デメリットはなんでしょうか。

まず相続前に不動産を売却するということは、一般的な「不動産売買」の取引になります。親が所有者(売主)となり、売却時には不動産の譲渡所得に準じて所得税と住民税が課税されます。

メリットは、まず「まとまった現金にできること」。対象の不動産の引き取り手がいない、処分しても問題ないというケースは現金にしたほうがいいかもしれません。現金で相続されると、不動産相続に比べて相続税率が割高になりますが、長期的なランニングコストを考えると安く済む場合もあります。

また、複数の相続人がいる場合、現金化したほうがスムーズに分割できるという点もメリットです。不動産を複数の相続人で分割しようとすると、相続人同士での話し合いに折り合いが付かず、トラブルになるケースが少なくありません。

一方のデメリットは、取引で売却益が出ると所得税や住民税が課税されることです。上に書いた「3年10カ月以内の売却なら譲渡所得課税の節税」などが使えないため、売却益(課税譲渡所得金額)に対する税金は大きくなる可能性が高いといえます。

1-3.「相続前」と「相続後」、売却するならどっちがいい?

ここまでをまとめると、以下のようになります。

売却メリット

2.相続不動産の売却時にかかる税金・諸経費

相続不動産の売却時にかかる税金・諸経費

1章では、相続した不動産を売却するメリット・デメリットを見てきましたが、この章では実際に相続した不動産を売却する際にかかる税金や経費がどれくらいかかるのかを見ていきましょう。

2-1.不動産売却時にかかる税金とその計算方法

不動産の売却時にかかる税金は、とてもシンプルです。式に表すと、以下のようになります。

不動産売却時にかかる税金と計算方法

大まかに考えると、例えば5,000万円で購入した不動産が7,000万円で売れた場合、譲渡所得は2,000万円となり、この2,000万円に対して所得税と住民税が課税されます。

なお、5000万円で購入した不動産が4000万円でしか売却できなかった、つまり買ったときの金額から売却したときの金額を引いてマイナスになった場合、ほかの所得と相殺し課税額を減らすこと(損益通算)はできなくなりましたのでご注意ください。

長期譲渡所得と短期譲渡所得

譲渡所得がプラスの場合、以下のように譲渡所得に規定の税率を乗じることで税金が計算されます。

税金(所得税・住民税)= 譲渡所得 × 税率

税率は、不動産の所有期間によって決定されます。

  • ・5年以下であれば短期譲渡所得
  • ・5年超であれば長期譲渡所得

所有期間の計算は譲渡の年の1月1日現在の判定になるので注意が必要です。

それぞれの税率は以下になります。

 

所得税

住民税

合計税率

短期譲渡所得

30.63%(※注

9%

39.63%

長期譲渡所得

15.315%(※注

5%

20.315%

(注)平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額×2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

この表を見ていただければわかるとおり、短期譲渡と長期譲渡の税率の差は約2倍です。したがって、所有期間が5年以下で短期譲渡になる場合は、長期譲渡になるまで待ったほうが税負担はかなり抑えられることができます。

なお、相続における所有期間は、被相続人が所有していた期間をそのまま引き継ぎます。例えば、被相続人の所有期間が既に5年超であれば、相続後すぐに売却しても、長期譲渡所得の税率が適用されます。

取得費がわからない場合、どうすればいい?

何十年も前に購入した不動産や、先祖代々受け継がれてきた土地を売却する場合、「購入金額がわからない」というケースもあるでしょう。

このような取得費がわからない場合「概算取得費」を用いて算出することが一般的です。概算取得費とは、譲渡価額の5%となります。例えば、譲渡価額が5,000万円の場合5,000万円×5%で取得費は250万円です。

なお、概算取得費は法的に強要された計算方法でなく、「取得費がわからない場合には、合理的な計算方法であればいい」とされています。このあたりは専門家に相談するか、もしくは税務署に確認しながら取得費を計算するようにしましょう。

2-2.不動産売却時にかかる諸経費

不動産を売却する際にかかってくる税金以外の諸経費としては以下のようなものがあります。

  • ■仲介手数料

    売却価格の約3%が相場です。ただし、不動産会社に直接買い取ってもらう場合にはかかりません。

  • ■抹消登記費用<(住宅ローンなどが残っている場合)

    住宅ローンなどが残っている場合には、抵当権が不動産に設定されているため、売却時に抵当権を外す抹消登記を行う必要があります。そのときに司法書士への報酬等が発生します。

  • ■印紙代

    数千万円単位の売買であれば印紙の金額は数万円程度になります。詳しくは国税庁のHPをご確認下ください。

  • ■建物の取り壊し費用

    建物を取り壊してから売却する場合には、取り壊し費用がかかります。

  • ■土地の測量代

    土地として売却するためには測量が必要です。

3.売却時に支払う税金を徹底的に節税する方法

売却時に支払う税金を徹底的に節税する方法

相続不動産を売却しようと検討している方なら、高く売る方法だけでなく「1円でも多く節税できる方法」を知りたいと思うでしょう。

こちらの記事では、不動産を相続する際にかかる相続税や節税する方法について説明しています。

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相続税の対策については以下の記事で詳しく説明していますのでこちらもぜひご覧ください。

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3-1.相続してから3年10カ月以内に売却する

相続してから3年10カ月以内に不動産を売却すると、「取得費加算の特例」が使える可能性があります。以下、詳しく見ていきましょう。

「取得費加算の特例」とは

取得費加算の特例とは、相続した不動産、株式、ゴルフ会員権などの財産を売ったときに得られる譲渡所得を計算する際に、支払った相続税の一部を「取得費」に加算でき譲渡所得の金額を軽減させられる特例のことです。

取得費加算の特例は、次の3つすべてに該当しなければ受けることはできません。 

  • ・相続によって財産を取得した者が売却したこと
  • ・その財産を取得した者が相続税を支払ったこと
  • ・相続開始日から3年10カ月以内に売却したこと

取得費に加算できる相続税の金額は、その人の相続税額×譲渡する不動産の相続税評価額÷(相続税課税価格+債務控除額)で計算ができます。

「取得費加算の特例」の具体例

これだけだとわかりづらいので、具体例を用いて見ていきましょう。

例えば、不動産5000万円、現金・預貯金3500万円の合計8000万円を相続し、相続税を2000万円納付したとします。

この場合、2000万円×5000万円÷(8000万円+0円)で、取得費に加算できる相続税の金額は「1250万円」となります。

では、被相続人が亡くなる8年前に5000万円で購入した不動産を例に考えてみましょう。

相続人は相続発生から3年10カ月以内に、相続した不動産を7000万円で譲渡しました。譲渡する際にかかった仲介手数料が200万円だったとき、取得費に加算できる相続税はどうなるのでしょうか。

取得費加算の特例を適用した場合の譲渡所得金額は、
7,000万円(譲渡収入金額)-(5,000万円(取得費)+1,250万円(相続税額))-200<万円(譲渡費用)=550万円となります。

この譲渡所得に長期譲渡所得時の譲渡所得税20%が課税されるので、
550万円(譲渡所得)×20%(長期譲渡所得時の税率)=110万円
つまり納付する所得税・住民税の金額は110万円となります(別途、復興特別所得税がかかります)。

3-2. 3,000万円特別控除

3,000万円特別控除とは、マイホームを売却した場合、所有期間の長短に関係なく利益部分(譲渡所得)から3,000万円を控除できるという特例です。 相続人が被相続人と同居していた場合、あるいは相続後に移り住んだ後に売却した場合などに適用が可能となります。

つまり、以下の式に当てはめて、譲渡所得がマイナスとなるようであれば税金は発生しないということです。

3,000万円の特別控除

たとえ譲渡所得がプラスであっても譲渡所得がかなり小さくなるため、相当の節税をすることができます。非常に効果の大きい特例といえるでしょう。

国税庁HP(マイホームを売ったときの特例)

参考:国税庁 マイホームを売ったときの特例

3-3.10年超所有軽減税率の特例

10年を超えて所有している居住用財産を売却して利益が出た時に、譲渡所得税の税率が低くなるのが「10年超所有軽減税率の特例」です。軽減税率を適用した場合の特例は以下のようになります。

所得

所得税率

住民税率

合計税率

6000万円以下の部分

10%

4%

14%

6000万円超の部分

15%

5%

19%

※復興特別所得税が別にかかります。

上の表内の所得が「6000万円以下の部分」とは、3000万円特別控除を適用した後の所得となります。つまり、3000万円特別控除の適用後でも、まだ6000万円超の所得がある場合、6000万円超の部分に対して長期譲渡所得と同じ税率がかかるということです。

3000万円特別控除に加え、所有期間が10年超であれば軽減税率の特例も使えるため、かなり節税することが可能となります。

国税庁HP(マイホームを売ったときの軽減税率の特例)

参考:国税庁 マイホームを売ったときの軽減税率の特例

まとめ

いかがでしたか。相続後一定の期間内に売却することで節税の恩恵を受けられたりもするため、被相続人が亡くなったあとは、できるだけ早く動き出す必要があるといえます。下記がこの記事のポイントになります。

1.複数の相続人がいて、遺産分割の際にもめそうなのであれば、相続前に売却して現金化するという選択肢もある。ただし、現金は相続不動産よりも相続税率が割高になり、また相続後の売買で適用される節税方法も使えなくなる。逆に相続人が1人であれば、相続後に売却したほうが節税面で有利。

2.不動産売却時に発生する税金の計算方法は以下のとおり。
譲渡所得 = 売却したときの価格(譲渡価額)− 購入したときの価格(取得費)− 掛かった費用(譲渡費用)
※譲渡所得がプラスの場合、その金額に対して所得税と住民税が課税される
※譲渡所得がマイナスの場合、所得税と住民税は課税されない

3.取得費がわからない場合、「譲渡価額の5%」で暫定的に計算することができる

4.不動産を売却する際にかかってくる税金以外の諸経費としては「仲介手数料」「抹消登記費用」「印紙代」「建物の取り壊し費用」などがある

5.売却時に支払う税金を徹底的に節税する方法としては、「取得費加算の特例」「3000万円特別控除」「10年超所有軽減税率の特例」の活用などがある

なお、様々な状況に応じたタイプ別の相続税対策については以下の記事をご参考ください。

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またこちらの記事では、税理士監修のもと相続不動産の売却における確定申告のポイントを徹底解説しています。併せてご一読ください。

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