すでにアパート経営をしていて、収益物件を所有し、家賃収入を得ている方のなかには「確定申告をする際、どんな経費が認められているの?」「経費について知らないがゆえに税金を多く支払うのは避けたい」「申告を間違って、税務署から指摘される恐怖から解放されたい」という悩みを持つ人も多いでしょう。みなさん、会社で経費精算をしたことはあると思いますが、アパート経営の経費についての知識に自信がある、という人は少数派だと思います。
そこでこの記事では、アパート経営にはどこまで経費として計上できるのか?
- ・アパート経営で必要経費として認められる17区分
- ・アパート経営の経費として計上できないもの
- ・領収書を保管する際の注意点
といったアパート経営にかかる経費について必要な知識を全て解説します。
不動産投資についても詳しい髙橋会計事務所の髙橋正典税理士の監修のもと、現役の不動産投資家でもある筆者が徹底解説します。
アパート経営をはじめる、運営していく際、融資や物件選びについて学ばれる方は多いですが、経費はそれらと同じくらい重要な知識です。
この記事を読み、アパート経営に計上できる経費・計上できない経費や注意点を正しく知って申告することで、節税効果を上げられます。さらに、税務署から申告漏れや不正経費として指摘される可能性も減らすことができます。
この記事があなたの資産を守るための不安の解消につながれば幸いです。
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1.アパート経営で必要経費として認められる17区分
アパート経営を行う場合、賃貸経営を通じて支払った費用の大部分を、必要経費として計上可能です。
なお、必要経費は確定申告や税務調査で厳しくチェックされるため、必要経費にできるかどうか判断に迷った場合は、必ず税理士など専門家に確認するようにしましょう。
経費にできるものは種類が多いので、順番に確認していきましょう。
1-1.固定資産税・都市計画税
不動産を所有していると「固定資産税」が発生します。さらに、都市部の物件を保有している場合は「都市計画税」もかかります。「固定資産税」と「都市計画税」の計算式はともに複雑なのでここでは割愛します。市区町村から決定した税額を記載した書面が送付されるので、書面に従って納付しましょう。
なお、固定資産税の納付スケジュールは市町村ごとに異なりますが、もっとも一般的なスケジュールを紹介します。
- 4月~6月:振込用紙と納税通知書の到着(郵送)
- 6月:第一期分の納付
- 9月:第二期分の納付
- 12月:第三期分の納付
- 翌年2月:第四期分の納付
1年を4回の期に分けて、それぞれに納付期限が設定されています。納税者は、「期ごとに支払いをする」もしくは「第一期の納付期限までに全期分をまとめて払う」のどちらかを選択できます。規模が大きくなれば、固定資産税だけで数百万円にもなりますので、その場合は複数回に分けて納税するケースが多いといえます。
1-2.その他税金(不動産取得税、登録免許税、印紙税)
固定資産税、都市計画税は毎年かかるものですが、物件購入時にかかる不動産取得税、登録免許税、印紙税も経費として計上できます。
1-3.仲介手数料
不動産会社に仲介してもらって物件を購入した場合、不動産会社に支払う仲介手数料は全額経費になります。
1-4.司法書士や税理士への報酬
司法書士に登記を依頼したり、確定申告を税理士に依頼したりした際の報酬も、経費として計上することができます。
1-5.保険料
建物に火災や地震等の損害保険をかけている場合は、その保険料が経費になります。
なお、一般世帯の場合は、全壊などの大きな被害を受けても、被災者生活再建支援法による支援金が受け取ることができます。しかし、賃貸物件オーナーは「自己責任」です。つまり、賃貸物件に深刻な被害を受けても、支援金を受け取ることはできず、自力で再建しなければなりません。
近年、地震の多発や台風などの風水害をはじめとした自然災害が頻発しています。今後もそうしたリスクは十分あるわけですから、火災保険への加入は必須と考えたほうがいいでしょう。
ちなみに、「火災保険」と一口にいっても、補償対象になるのは火災損害だけでなく、落雷や暴風、水害による損害などさまざまな自然災害による損害、また突発的な人為的事故も含まれます。また地震保険に加入する場合、火災保険とセットで加入する必要があります。
1-6.減価償却費
アパート経営で最も金額的に高いのが減価償却費です。国税庁が定める耐用年数で購入費を分割して、毎年少しずつ経費として処理します。減価償却の計算は少し複雑なため、ここでは割愛します。
一例として、賃貸の木造アパートなら耐用年数は22年なので、3000万円(建物部分のみ)で木造アパートを新たに建てたのなら、22年間毎年約136万円ずつ経費を計上できます。
1-7.修繕費
部屋のリフォーム費用、設備交換費用などは経費計上できます。ただし、建物の性能を向上(バリューアップ)させるための費用は経費に含まれないので注意が必要です。
なお、修繕積立金については、実際に修繕等が行われその修繕等が完了した日の属する年分の必要経費になりますが、一定の要件を満たす場合には、支払期日の属する年分の必要経費に算入することが可能です。
具体的な要件について気になる方は、以下の国税庁HPからご確認ください。
1-8.管理委託費
管理会社へ支払う管理料の実額が経費となります。管理委託料は家賃収入に対し、5%程度が一般的です。
なお、区分マンション投資の場合、管理会社はすでに決まっているので、毎月、管理費から委託料として一定額をその会社に支払います。その金額が経費として計上できます。
1-9.広告宣伝費
管理会社や客付け会社に依頼して宣伝広告をしてもらう場合の広告宣伝費も経費になります。 広告宣伝費の主な内訳は、近隣地域に配るチラシのデザイン料や印刷費、ポスティング費用、営業マンの人件費などです。
1-10.ローンの金利
アパート経営をするにあたって、物件をローンで購入した場合、返済時の金利は経費として計上できます。ただし、ローンの元金(不動産の購入費用)は、不動産の購入費用は減価償却するため、経費計上ができません。
1-11.借地料
地主から土地を借りて借地権が発生している場合、借地の利用料も経費にすることができます。
1-12.旅費交通費
アパート経営するための物件を見学に行く、あるいは物件を管理するために電車やバス、自家用車を使って移動した際は、公共交通機関の運賃、自家用車のガソリン代や駐車場代、ホテルの宿泊費などは経費として計上できます。
また、車を利用している場合は、ガソリン代や駐車場代、高速料金、車検費用、自動車保険料、自動車税なども必要経費として計上できます。
ただし、アパート経営に必要な分だけが経費できるのであって、個人で旅行に行くための費用は経費とはなりません。そのため、物件を見に行くケースでは、領収書とは別にその物件の情報の資料も保存しておくのが望ましいです。
なお、自家用車をアパート経営のために使う場合、アパート経営に必要な分だけ経費として計上します(これを「家事按分」と呼びます)。仮にプライベートで8割、アパート経営で2 割使用するのであれば、2割の部分を経費として計上できるということです。
1-13.通信費
アパート経営を運営するための情報収集、もしくは不動産会社や管理会社と連絡をするためにスマートフォンやパソコンなどを使った場合、スマートフォンやパソコンの購入代金、使用料、インターネップロバイダー費用、ソフトウェアやアプリの購入代金などは経費として計上できます。
ただし自家用車同様、プライベートでも使っている場合(そのケースが大半だと思います)、「家事按分」します。
1-14.事務用品費
経理作業などに使うノート、ペン類、ファイルなどの文房具も「事務用品費」として経費にできます。こうした消耗品費は「雑費」として計上することも可能ですが、最初から項目を分けておくほうが税務上健全です。
1-15.アパート経営や不動産投資に関する新聞や書籍、セミナー費
新聞や書籍代、セミナー代など不動産投資の勉強や情報収集のために使った費用も経費として計上できます。また、月額定額制の雑誌・書籍読み放題サービスの利用料も、事業に使った分は経費として計上可能です。もちろん、無関係な本やセミナー参加費などは経費として認められません。
また、資格取得費用はたとえ不動産関連であっても経費としては認められないことが多いので注意が必要です。
1-16.接待交際費
不動産会社や管理会社の担当者と食事をしたときの飲食代も、経費として計上可能です。大家の会の忘年会。食事会などの際も事業関連ということで認められます。その際の食事代などは、誰と行ったかを分かるようにしてください。もちろん、個人、もしくは家族、恋人、友人などと外食したケースは経費として認められません。また飲食代だけでなく、不動産会社や管理会社への手土産も経費として認められます。
1-17.消耗品費
デジカメ、パソコン、プリンターなどはアパート経営において必要であれば、消耗品として経費計上することができます。
2.経費として計上できないもの
続いて、アパート経営の経費として計上できない費用を理解しておきましょう。経費に落とせないものを事前に知っておくことは重要です。
「税務調査」によって帳簿に問題が見つかった場合、追加徴税などを課せられてしまいます。 追徴課税とは「税務署に申告した所得税もしくは法人税が、実際よりも少なかったことが発覚した場合になどに加算される税金」のこと。追徴課税される税金は、すぐに納付しなければならず、しかも分割払いはできません。
追徴課税の支払いができないと、最悪の場合は財産を差し押さられることもあります。十分注意が必要です。
2-1.事業に直接関係のない出費
上で紹介した「旅費交通費」「通信費」「事務用品」「新聞や書籍、セミナー費」「接待交際費」に関しては、プライベートの利用割合と事業に使った利用割合を分けて、プライベートの利用部分を経費から除外しなければなりません。
しかし通信費のように、不動産会社や管理会社の担当者との連絡を取った割合といっても、厳密に計算できるものではないと思います。その場合、「プライベートの利用部分7割、事業の利用部分3割」などと大まかに割り振ることになります。
なので、誤差の範囲であれば税務調査でも指摘されることはまずないですが、「プライベートの利用部分1割、事業の利用部分9割」というように極端に配分し、かつ明らかに連絡を取った形跡が少ない場合、申告に不備があるとみなされる可能性もあります。「どうせ調べようがないから経費にしてもいいだろう」などと考えると、あとから痛い目に遭う恐れがありますので、常識の範囲内で経費計上しましょう。
2-2.ローンの借入金の元本
ローンの利子部分は経費になりますが、借入金の元本は経費にはできません。元本を入れると大きな額になってしまうので、間違って経費計上すると税務署に指摘されるきっかけになりかねません。注意しましょう。
2-3.所得税や法人税
不動産取得時の各種税金や固定資産税などは経費として認められていますが、所得税や法人税は経費の対象外です。
2-4.反則金・罰金など
追加徴税はもちろん、物件に訪問した際に車を停めて違反切符を切られた場合などの罰金も経費にすることはできません。
3.領収書を保管する際の注意点
アパート経営の経費を計上するためには、経費を証明できる書類、つまり領収書が必要不可欠です。
経理関連の書類は最低7年間保管しておくことが義務づけられています。なくさないよう年度ごとにファイリングしておくことをおすすめします。
なお、領収書として認められる書類の形式には以下の条件があります。
- ・日時
- ・金額
- ・宛名
- ・領収書(レシート)を打ち出した担当者の名前
- ・お金を使った目的と品名
上記の条件を満たしていれば、証拠書類は領収書でもレシートでも構いません。
バスの交通費など領収書を用意できない場合、経費を使った日時やその他の証拠(切符等)を書類として残しておけば、経費として処理できます。
まとめ
1.「旅費交通費」「通信費」「事務用品」「新聞や書籍、セミナー費」「接待交際費」に関しては、プライベートの利用割合と事業に使った利用割合を分けて、プライベートの利用部分を経費から除外しなければならない
2.必要経費は確定申告や税務調査で厳しくチェックされるため、必要経費にできるかどうか判断に迷った場合は、必ず税理士など専門家に確認する
3.領収書(レシート)最低7年間保管しておくことが義務づけられている
いかがでしたか。アパート経営として計上できる経費の区分を見て、「こんなものも経費できるのか」と驚かれた方もいらっしゃるかと思います。
ただし、近年はサラリーマン大家の増加に伴い、個人であっても税務署のチェックが厳しくなっていると聞きます。不当に経費計上した際の追加徴税は大きな出費になりますので、正しい知識を身につけ、必要分だけ申告するよう心がけてください。
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