相続などの関係で再建築不可物件を所有している人、もしくは購入を検討している人は、再建築不可物件を「どう活用するのか」は大きな問題です。なぜなら、再建築不可物件は、建物を取り壊したり、建て替えたりすることが出来ないからです。
この記事では、再建築不可物件を「収益を生む投資物件」に生まれ変わらせるために必要な知識や情報をお伝えしていきます。
- ・基礎知識とメリットデメリット
- ・再建築不可物件の探し方と購入のポイント
- ・再建築不可物件を購入した際の具体的な活用方法
など、上手く活用していくために必要な基礎知識を解説しながら、不動産投資にどう活用していくのか、その方法についてもお伝えしていきます。
私は10棟の不動産物件を所有する現役不動産投資家であり、不動産投資を始める人へのアドバイス、サポートを行うコンサルタントとしても活動しています。不動産投資のプロとしての知識と経験から「結局のところ再建築不可物件は利益を生むのか?」についての私なりの回答もお伝えしていきたいと思います。
1. 再建築不可物件とは
再建築不可物件とは、今ある建物を取り壊して新しく建て替えることができない不動産物件のことを言います。なぜ再建築不可物件は取り壊すことができないのか、まずは基礎知識からお話して行きます。
1-1.どのような建物を再建築不可物件というのか
再建築不可物件は、なぜ取り壊したり、建て替えたりと、再建築することができないのでしょうか?その理由は、建築基準法第43条に抵触していることです。主な理由には以下の2つがあります。
- ・前面道路が、建築基準法上道路として認められていない
- ・前面道路が建築基準法上道路として認められているものの、接道幅員が2m未満
建築基準法で認められている道路とは幅4m以上の道路です。再建築不可物件は、こうした道路に面していないことが多く、面していても道路に接する接道の幅員が2m以上なく「接道義務」を満たしていないことが理由として挙げられます。
1-2. 再建築不可の物件を購入するメリットデメリット
このような理由から再建築ができないわけですが、取り壊したり建て替えたりできないことは不動産投資で活用する上で大きなデメリットになります。
1-2-1.メリット
一方、再建築不可物件を購入するメリットもあります。
- ・購入価格が安い
- ・安い分メンテナンスに費用をかけられる
- ・固定資産税が安い
一番のメリットは、安く購入できるという点です。再建築不可物件は、古くからある不動産物件であることが多く、ほとんどの場合メンテナンスが必要です。購入費用を安く抑えることができればリフォームやメンテナンスにお金をかけることができ、物件価値を高める為に費用を使えることは、不動産投資で活用する場合のメリットと言えます。
1-2-2.デメリット
再建築不可物件のデメリットは以下があります。
- ・再建築できない
- ・メンテナンス費用が高額になる場合が多い
- ・住宅ローンを利用できない
- ・建物としての価値がない
とにかく一番のデメリットは再建築できない点です。再建築不可物件は古くからある不動産物件が多いことをお話しましたが、補強、補修などメンテナンス費用がかかることも多くあります。購入後も継続的にメンテナンスを行う必要があり、災害などのリスクが高いことも注意が必要です。不動産投資で活用する場合には、住宅ローンが使えないこと、建物としての価値がないこと、これらも十分理解した上で購入する必要があります。
1-3.なぜ再建築不可物件が生まれるのか
そもそもなぜ取り壊したり、建て替えたり出来ない再建築不可物件が生まれるのでしょうか。「違法建築によって建てられた物件?」と思う人もいるかもしれませんが、再建築不可物件は今の建築基準法が出来る前に建てられた物件がほとんどです。
その多くが40、50年前に建てられた物件で、当時の基準では再建築可能だった物件が、新しい基準が出来たことで再建築できなくなったわけです。実はこうした物件は意外に多く残っています。とは言え、中には少なからず違反建築物も存在しますので、相続や売買を考える際にはどのような物件なのかを十分に調査する必要があります。
1-4.なぜ再建築不可物件は買ってはいけないといわれているのか?
再建築不可物件は「買ってはいけない物件」と言われることが多いわけですが、1章でもお伝えした通りデメリットの大きさがその理由です。
特に、修繕などメンテナンスが必要なことは明らかなのに再建築できないことは大きなリスクだと言えます。そのため、そのリスクをカバーできるような不動産投資の知識や経験がない人は、無暗に手を出しても上手くいかないことが多くあります。扱いにくい物件なので、当然売却も難しくなります。購入して上手くいかないからといって転売することも難しいので、気軽に手をだすべきではありません。
再建築不可物件を語る際には、いくつかのキーワードが出てきます。以下のキーワードが出てくる際には、「迂闊に買ってはいけない土地」と考え、注意することをおすすめします。
1-4-1.注意すべきキーワード「私道」
私道とは、個人や企業、団体が持つ土地、私設の道路を指します。国道、都道府県道、市町村道などの公道以外の道路のことです。私道に接している土地に、建物を建てる場合所有者の承諾を得る必要があります。私道が「建築基準法」で認定された道路でなければ、原則建物を建てることが出来ない、などの決まりもあります。
1-4-2.注意すべきキーワード「袋地」
周囲を他人の土地に囲まれ、道路に面していない土地を袋地、または囲繞地と言います。接道義務を満たしていないため、袋地のままでは建物を建てることが出来ません。
1-4-3.注意すべきキーワード「既存不適格建築物」
建てられた当時は法律に適合していた建物が、法律が変わることで不適合とされてしまった物件のことを言います。現行の法律を満たしていないことから、再建築不可物件に当てはまります。
1-4-4.注意すべきキーワード「旗竿地」
道路に接する入り口部分が狭く、通路のように狭くなっていて、奥に広がる土地を旗竿地と言います。2m以上の接道が無ない旗竿地も再建築不可物件となってしまいます。
2.再建築不可物件の探し方と購入の際のポイント
再建築が出来ないことから、一般的には「買うべきではない物件」と言われるわけですが、改修メンテナンスを行うことで住むことが出来る物件も多くありますし、やり方次第では不動産投資に活用することも不可能ではありません。どうやって探すのか、購入の際にはどんなことに気を付けるべきなのかをお伝えします。
2-1.再建築不可物件の探し方
再建築不可物件は、一般的な不動産業者では扱いが少なく、インターネットなどを活用して探すのが効率的です。「SUUMO」などの不動産ポータルサイトを使って検索をしたり、再建築不可物件を扱う専門業者に問い合わせをして探す方法があります。
購入方法は、一般的な不動産物件の購入時と同じく、現金、ローンなどの方法があります。元々再建築不可物件は担保価値が低いこともあり、すでに不動産物件を所有している場合は、所有している物件を担保にしてローンを組む方法もあります。
2-2.購入の際にチェックするポイント
再建築不可物件は、築年数が40年、50年以上の古い物件であることがほとんどです。購入を検討する際には慎重に物件調査を行う必要があります。安く購入できても、修繕費、メンテナンス費が高くつくようだと投資物件として収益性が悪くなります。
どんなところに注意すべきか、チェックポイントは以下があります。
- リフォームの必要がある箇所、
- リフォーム履歴
- リフォーム、メンテナンスなどで必要にある費用
- 築年数
リフォーム必要箇所や履歴をしっかりと確認して、どのぐらいの費用がかかるかをあらかじめ見ておくことが重要です。築年数から耐震基準を満たしているかどうかを判断することもできます。再建築不可物件はリフォームなどの修繕費がかかることを想定し、購入後に必要となる費用を事前に把握するようにしておきましょう。
3.再建築不可物件を投資物件として活用する3つの方法とは
不動産投資に再建築不可物件を活用するなら、どのように活用すべきか。再建築不可物件は再建築不可と言う問題があることから、相場より安く購入できるメリットがあります。このメリットを上手く活用すれば、売却益を得たリ、賃貸で利益を得ることが出来ます。ここでは3つの具体的な方法を紹介
3-1.リフォームして売却や賃貸に出して利益を得る。
再建築不可物件は一般的な不動産物件に比べてかなり安く購入できることで、浮いた費用を使ってリフォームやリノベーションを行うことが出来ます。再建築不可物件を買い取る専門業者もありますので、物件を購入してリフォームやリノベーション、メンテナンスなどを行い、物件価値を高めることによって売却益を得ることも可能です。
リフォーム、リノベーション、メンテナンスなどを行って、賃貸物件として家賃収入を得ることも出来ます。物件価格が安いことから、賃貸物件として高い利回りを期待できます。古い建物であることを上手く活かしてリフォームやリノベーションを行うことで、収益物件として運用することも可能です。
3-2.再建築不可を建て替え可能にする
建築基準法を満たしていないことが、再建築できない原因です。例えば接道については、2m以下だと接道義務満たしません。このような場合でも、条例を駆使して再建築を可能にすることも出来ます。
例えば、建築基準法第42条第2項の規定では、
- この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(前項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。
ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。
引用:建築基準法第42条
「現行の道路の中心から2m下がったところであれば建物を建てられる」とされています。これは「2項道路」「みなし道路」と呼ばれる方法があります。2項道路、みなし道路として認めてもらうことで再建築が可能になります。
また、接道義務の緩和措置として、
- 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。
ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。
引用:建築基準法第43条
建築基準法第43条でこのように定められており、許可を得ることで同様に再建築可能にすることも出来ます。
申請することで再建築が可能になるケースがあることを知っておき、こうした条例を上手く使う方法もあります。ただし専門知識を要するため、素人には難しく、再建築不可物件や、条例に詳しい専門家に相談する必要があると言えます。
3-3.隣の土地を活かす
接道義務を満たすために、隣の土地を購入するという方法があります。当然土地を購入するための資金が必要になりますが、資金力がある場合には有効な方法です。 また再建築不可物件を所有している場合には、隣の人に売却する方法もあります。更地にしてしまうと売却が難しくなる可能性が高くなるので注意が必要です。
3-4.具体的な建築可能例
道路に接している再建築不可物件であれば、但し書き申請をして、許可を得ることが出来れば、戸建もしくは2戸以下の共同住宅を建てられることがあります。これは地域によって変わり、一般的には案件化に向け半年~1年以上の期間が必要になります。申請費用は案件によりますが、200万円程度かかることも多いのですが、このような方法を取ることで再建築できるケースもあります。
他にも、昔の測量で境界が誤った形で登記されているようなケースでは、境界線を引きなおすことで接道義務を満たし再建築可能になることもあります。
4.結局のところ、再建築不可物件を購入して損をしないのか?
再建築不可物件とはどんな物件なのか、どう活用すべきかを見てきましたが、再建築不可物件は不動産投資において扱いにくい物件であることは確かです。しかし一定の条件を満たすものに関しては、駆使したり、役所へ申請したりすることで再建築可能になる土地もあります。
再建築不可物件は元々割安なので、安く買って再建築可能にすることが出来れば「歪み」を生み、不動産投資でも収益を生む物件へ生まれ変わらせることが出来ます。そこで必要なのが、リスクをカバーする専門的な知識、条例を駆使する専門的な知識です。一般的な不動産投資家であれば専門的な知識を身に付けることも難しく、再建築不可物件や条例に詳しいプロの投資家、専門家に相談したり、アドバイスを仰ぐことも必要です。
5.まとめ
- 1.再建築不可物件は再建築できないが、安く買えるというメリットもある。
- 2.購入する際には、リフォームやメンテナンスにかかる費用を算出しておく。
- 3.投資物件として活用するための3つの方法を知る。
- 4.リスクをカバー出来れば、収益を生む投資物件に生まれ変わらせることも可能。
再建築不可物件は扱いが難しく、特に初心者であれば手を出すべきではありません。しかし一般的な不動産物件に比べて割安で購入できる分、再建築できないデメリットやリスクをカバーすることができれば、歪みを生み、収益物件に生まれ変わらせることも出来ます。
安く仕入れられるようであれば、再建築できなくても賃貸物件として貸し出し利益を得ることも可能です。再建築不可物件を不動産投資に活用する際には、いくらで土地を仕入れられるのか、但し書き申請や許可を得る為の行政ルールの把握、土地家屋調査士などに相談、連携する、などのポイントを押さえて検討してみて下さい。