不動産投資家も知っておくべき! 「消費税還付」の時期・手続き・計算例

消費税還付については、【知識ゼロでも5分で理解できる! はじめて学ぶ人のための「消費税還付」】の記事で基礎的な内容を紹介しました。
また、【令和2年9月末まで! 不動産投資「消費税還付」の考え方】の記事では、過去にあった消費税を還付する方法とともに、令和2年から不動産投資における消費税還付が難しくなることを解説しました。

この記事では、

  • 消費税還付はいつ行うべきか
  • 消費税還付に必要な手続きとは
  • 課税売上割合とは
  • 消費税還付の計算方法

について解説します。

消費税還付については、これまでの歴史を振り返っても“イタチごっこ”の側面があります。つまり、グレーゾーンを経営者や投資家が狙い、そこに国が対応するということを繰り返しているわけです。

したがって、令和2年に不動産投資における消費税還付は不可能になりそうですが、それ以降、また何らかの手法が生み出される可能性はあります。もちろん違法なことには手を出してはいけませんが、合法な手法ならば、あとはその人の倫理観で判断をするべきです。

「不動産投資で消費税還付ができなくなる」といわれている時期だからこそ、もし形勢が変わった際のことも考慮して、実際に行うときの方法を学んでおくことも重要だと思います。

1.消費税還付はいつ行うべきか

1.消費税還付はいつ行うべきか

1-1. 「課税事業者とは?」のおさらい

【知識ゼロでも5分で理解できる! はじめて学ぶ人のための「消費税還付」】の記事で解説したように、消費税の還付を受けられるのは、課税事業者です。改正消費税法では、消費税課税事業者を次のように定義されています。

  • 1. 事業年度の前々事業年度(基準期間)における課税売上高が1000万円を超える法人事業者
  • 2. 前々年の暦年(基準期間)における課税売上高が1000万円を超える個人事業者

なお、既存の課税事業者は、所轄の税務署長に「消費税課税事業者届出書」を提出する必要があります。

消費税課税事業者届出書のサンプルを確認する

※ 前々事業年度が1年未満の場合は、その事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年以内に開始した各事業年度を合わせた期間の課税売上高の合計額をその各事業年度の合計月数で割った額に12を掛けて計算した金額

  • 3. 基準期間がない法人のうち、その事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が1000万円以上の法人(課税事業者)
  • 4. 課税事業者となることを選択した者

引用:国税庁ホームページ・税金の還付

1-2. 申請に必要な書類

申請に必要な書類は以下のとおりです。

法人課税事業者の場合

  • ・「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」
  • ・「仕入控除税額に関する明細書(法人用)」
  • ・「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」
    ※課税期間の末日の翌日から2カ月以内に、これらの書類を所轄税務署長へ提出しなければなりません。

個人課税事業者の場合

  • ・「課税期間分の消費税および地方消費税の確定申告書」
  • ・「付表2 課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算書」
    ※課税期間の翌年3月末日までに、これらの書類を所轄税務署長へ提出する必要があります。

1-3. 追加書類が必要な場合も

上記の書類以外にも、税務署から追加書類を求められることがあります。 輸出免税によって還付となった場合、輸出許可書のコピーやインボイスなどを求められます。また、高額な資産を購入したことが原因である場合、その資産購入時の請求書や領収書などを求められることもあります。確実に還付を受けるためには、税理士に還付申告を依頼すると良いでしょう。

1-4. 還付金を受け取る方法

還付金の受取りには、預貯金口座への振込みによる方法(※)と最寄りのゆうちょ銀行各店舗又は郵便局に出向いて受け取る方法があります
預貯金口座への振込みを利用すると、指定された金融機関の預貯金口座に還付金が直接振り込まれ、大変便利です。

※参考:預貯金口座への振込みによる方法

1-5. 還付金はどのタイミングで還付されるのか

これについては、国税庁は以下のように回答しています。

  • 還付金については、速やかに支払手続を行うよう努めておりますが、申告書の記載内容や添付書類等の審査など、支払手続を適正に行うための所要の処理を正確に行う必要があることから、その支払手続にはある程度の日数が必要となります。  
  • 特に、2月・3月の所得税及び復興特別所得税と消費税及び地方消費税の確定申告期間中は、大量の申告書が提出される時期ですので、還付金の支払手続にはおおむね1か月から1か月半程度の期間を要することをご理解ください。
  • ※自宅や税理士事務所からe-Tax(電子申告)で提出された還付申告は3週間程度で処理しています(e-Taxで1月・2月に提出された場合は、2~3週間程度で処理しています。)。
    ただし、申告内容が誤っていたことにより、改めて申告書を作成し、提出した場合は、e-Taxで提出した場合であっても、上記期間で処理されないことがあります。

引用:国税庁ホームページ・税金の還付

つまり、確定申告や復興特別所得税などの時期である2、3月なら1〜1カ月半、e-tax(電子申告)なら3週間程度ということです。もし2〜3月以外で申告した場合は、2週間程度と考えてよいでしょう。

1-6. 課税期間を短縮することも可能

これは資金繰りに悩んでいる輸出業者などにおいて有効ですが、課税期間を短縮することができます。具体的には、税務署に「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出することで可能となります。 課税期間を短縮すれば、年に4回または12回の還付申告を行うことができるため、より短期的な周期で還付金を受取ることが可能となります

2. 課税売上割合とは

2-1. 課税売上割合はどんなときに用いられるのか

消費税納税額の計算方法は、「消費税納税額=預かり消費税―支払消費税」ですが、すべてのビジネス上の取引で消費税が課税されるわけではありません。例えば、給料や土地などには消費税は課税されません。したがって、ビジネス上の取引でも、消費税がかかる取引課税取引)、それ以外(非課税取引・不課税取引)があるということです。

そして、「課税取引」といっても、「全額控除できる事業者」と「一部しか控除できない事業者」の2つに分けられます。

・課税売上高が5億円超、もしくは課税売上割合が95%未満の事業者の場合
→「一部控除不可」になります。

・上記以外(課税売上高が5億円以下、かつ課税売上割合が95%以上の事業者)
→「全額控除可」になります。

上のとおり、消費税が全額控除できる事業者か否かの判断をする際に、課税売上割合を導く必要があるのです。ちなみにこれは、「95%ルール」とも呼ばれます。

重要なことは、課税売上割合が95%以上であれば、支払った消費税額がすべて控除でき、課税売上割合が95%未満の場合、支払った消費税額をすべて控除できないということです。後者の場合は計算式が少々複雑になるので、後ほど詳しく解説します。

2-2. 課税売上割合の計算方法

ビジネス上の売上は、ほとんどが「課税売上」となります。
課税売上割合の計算は、次の算式により計算します。

課税売上割合の計算式図

左辺にある「課税売上割合」とは、国内において「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」の取引です。

分母の総売上高とは、国内における資産の譲渡等(※ )の対価の額の合計額をいいます(課税売上高と輸出による免税売上高、非課税売上高の合計額となります)。
※特定資産の譲渡等(「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」)を除きます。

分子の課税売上高とは、国内における課税資産の譲渡等(※)の対価の額の合計額をいいます。これには、輸出による免税売上高が含まれます。

なお、総売上高と課税売上高の双方には、 「貸倒れになった売上高」を含みます。また、売上げについて返品を受け、もしくは値引、割戻し等を行った場合は、それらに係る金額を控除します。

2-3. 個別対応方式と一括比例配分方式

前述したとおり、課税売上割合が95%未満の場合、支払った消費税額をすべて控除できません。
では、どのように計算すればよいかというと、個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2種類の方法のいずれかを選択する必要があります。

※ただし、課税売上割合が95%以上でも、課税売上高が5億円を超える事業者は「個別対応方式」と「一括比例配分方式」のどちらかの方法によって計算しなければなりません。

個別対応方式

個別対応方式を選択するためには、課税仕入れを以下の3つに区分して計算します。

(1)課税売上に対応する課税仕入れ
→仕入など直接売上に対応するもので全額控除できます。

(2)非課税売上に対応する課税仕入れ
→水道代や家賃などの経費などで課税売上割合分の控除ができます。

(3)課税売上と非課税売上に共通して対応する課税仕入れ
→土地を売却したときの手数料などで全額控除できません。

また、個別対応方式の計算式は以下のとおりです。

控除できる仕入税額 =課税売上対応仕入の消費税額+(共通対応仕入の消費税額×課税売上割合)

一括比例配分方式

一括比例配分方式では、課税期間中のすべての仕入にかかる消費税額を課税売上割合分のみ控除します。個別対応方式と異なり、3つに区分する必要はありません。

一括比例配分方式の計算式は、以下のとおりです。

控除できる仕入税額=支払った消費税額×課税売上割合

ただし、個別対応方式では全額控除できた課税売上対応の仕入税額も、一括比例配分方式では課税売上割合分しか控除できません。

3.消費税還付の計算例

3.消費税還付の計算例
ここでは、いくつかの事例をもとに消費税還付の計算を見ていきましょう。

3-1. ケース1

  • ・売上  1億円(預かり消費税600万円)
  • ・商品仕入  1億5000万円(支払い消費税800万円)
  • ・支払給料   1000万円(支払い消費税なし)

この場合は、1億円-(1億5000万円+1000万円)=△6000万円の赤字となり、消費税の計算でも600万円-800万円=△200万円で、還付を受けることができます。

3-2. ケース2

  • ・売上  1億円(預かり消費税600万円)
  • ・商品仕入  8000万円(支払い消費税500万円)
  • ・支払給料  2500万円(支払い消費税なし)

この場合、1億円-(8000万円+2500万円)=△500万円の赤字とはなります。しかし、消費税の計算は600万円-500万円=100万円なので、納付をしなければならないことになります。

3-3. ケース3

  • ・売上  1億円(輸出免税により消費税なし)
  • ・商品仕入  7000万円(支払い消費税450万円)
  • ・支払給料  500万円(支払い消費税なし)

この場合、1億円-(7000万円+500万円)=2500万円の黒字となりますが、輸出免税により預かり消費税はないため、消費税の計算は0-450万円=△450万円で、還付を受けることができます。

3-4. ケース4

  • ・売上  1億円(預かり消費税600万円)
  • ・商品仕入  8000万円(支払い消費税500万円)
  • ・店舗購入  2000万円(支払い消費税160万円・減価償却費92万円)

店舗の建物を2000万円で購入したケースです。
この場合、1億円-(8000万円+92万円)=1908万円の黒字となります。しかし消費税の計算は600万円-(500万円+160万円)=△60万円なので、還付を受けることができます。

まとめ

1. 消費税課税事業者の定義は以下のとおり。

  • ・事業年度の前々事業年度(基準期間)における課税売上高が1000万円を超える法人事業者
  • ・前々年の暦年(基準期間)における課税売上高が1000万円を超える個人事業者

2. 還付金の受取りには、預貯金口座への振込みによる方法(※)と最寄りのゆうちょ銀行各店舗又は郵便局に出向いて受け取る方法がある

3. 還付金のタイミングは、確定申告や復興即別所得税などの時期である2、3月なら1〜1カ月半、e-tax(電子申告)なら3週間程度。もし2〜3月以外で申告した場合は、2週間程度。

4. 税務署に「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出することで課税期間を短縮することが可能である。

5. 課税売上割合が95%以上であれば、支払った消費税額がすべて控除でき、課税売上割合が95%未満の場合、支払った消費税額をすべて控除できない
課税売上割合が95%未満の場合、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2種類の方法のいずれかを選択する必要がある。
ただし、課税売上割合が95%以上でも、課税売上高が5億円を超える事業者は「個別対応方式」と「一括比例配分方式」のどちらかの方法によって計算しなければならない。

いかがでしたか。消費税還付は細かな知識が求められるため、確実に還付を受けるのなら税理士に相談するのがよいでしょう

ただ、【令和2年9月末まで! 不動産投資「消費税還付」の考え方】の記事で解説したように、不動産投資における消費税還付は令和2年の税制改正により、ほぼ不可能になります(2020年9月末までに賃貸住宅用建物を取得した場合、または2020年3月末までに賃貸住宅用建物の取得契約を行った場合を除く)。ただ、これからの動向はまだわからないですし、消費税還付は非常に大きな節税策なのは事実なので、過去のこととは思わず、知識を身につけておくことが大切です。

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