「家賃滞納」は不動産物件を所有する大家さんの頭を悩ませるトラブルの1つです。客付けの時点で入居者が家賃を滞納するかどうかは分からないため、未然に防ぐことは難しいかもしれません。だからこそ大切なのが、家賃滞納が起きた時にどう対処するか、適切な対処法を知っておくことです。
そこでこの記事では、
- ・なぜ家賃滞納が起こるのか、その理由
- ・支払う気がある人、ない人、それぞれへの対処法
- ・いざ起きてから慌てないようにするために備えること
家賃滞納の基礎知識や、起こってしまった時の対処法についてお伝えします。
私は10棟の不動産物件を所有している現役の不動産投資家であり、不動産投資を始める方へのサポートやアドバイスなどを行うコンサルティング業も行っています。これまでに数多くの不動産を扱ってきた経験から、「こんな時はこう対処すればいい」「こんな物件は気を付けて置いた方がいい」という、実践的な対処法についてもお伝えします。
家賃滞納は事前に防ぐことは難しくても、適切な対処法や「そもそもこんな物件はトラブルに発展しやすい」という物件の見極め方をお伝えします。最後までお読み頂くことで、家賃滞納トラブルをある程度回避できるようになるはずです。参考にしてみてください。
1.家賃滞納が起こってしまうのはなぜか?
そもそもなぜ家賃滞納が起こるのか?入居者の身に起きていること、家賃滞納が起こる理由を理解しておくことが重要です。ここでは、なぜ起こるのか、どう対処すべきか、をお伝えします。
1-1.なぜ家賃滞納は起こるのか?
一口に「家賃滞納」と言っても、入居者によってその理由は様々です。
- ・単純に忘れていた
- ・旅行など長期で離れていて払えなかった
- ・急な病気や怪我で入院していた
など、突発的な理由によるものから、
- ・お金がなく払えない
- ・支払う意思がない
という理由まで、入居者によって様々な理由を抱えています。上記をご覧頂いても分かるように、家賃滞納は大きく分けて「支払う気のある人」「支払う気のない人」に分けることが出来ます。単純に支払いを忘れていたり、短期的に支払いが難しい理由がある場合には、多少の時間を要すればその後すぐに解決することもあります。
ただし問題は、お金がない人や支払う気がない人の場合です。このような場合には問題が複雑化し、長期的なトラブルへと発展してしまうケースがあります。
家賃滞納が起こる背景として
- ・近年、景気の停滞が原因による貧困層が増加していること
- ・家賃保証会社が増え、審査が甘くなったこと
などがその一因としても言われています。「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」によると、2か月以上の滞納率は0.9%となっており首都圏と関西圏で下降傾向です。
公益財団法人日本賃貸住宅管理協会が調査している第24回賃貸住宅市場景況感調査という調査で、2020年4月~2020年9月の結果は以下となります。
1-2.家賃滞納にはいつから対処するべきか
単純に忘れていたり支払いが難しい状況があったりと、理由が様々なことから
- 「家賃滞納はどのタイミングで対処するか」
という問題があります。数日の滞納ですぐに何かしらの対応を行うのか、待つべきなのか、どのタイミングで動くべきかは、難しい問題だと言えます。
家賃滞納は5年の消滅時効が適用されます。
- 数年に渡って滞納が行われている場合には、時効によって消滅してしまわないように対処することが求められます。また、これまでの滞納履歴を考慮して動くようにすることも重要です。何度も滞納を繰り返すような入居者であれば、数日の滞納でも事態を重く考える意味でもすぐに動く必要があります。
基本は早期に動くことですが、それまでに一度も滞納していない入居者であれば、緊急性は低いと判断して様子を見ることも出来ます。
- これまでの支払い
- 延滞実績
- 大家さんとの関係性
- 人間関係
これらを考慮しながら動くタイミングを考える必要があります。
2.家賃滞納者の種類によって対応方法を変える
家賃滞納に対する対処法は、支払う気がある人、ない人とで対処法を変える必要があります。特に、支払う気のない悪質な入居者や滞納を繰り返す入居者に関しては、法的措置も頭に置いて、然るべき手順で家賃の督促を行っていくことが求められます。
2-1.支払う気のある人に支払わせるための方法
支払い意志があり、ただ忘れていただけ、何かの事情でたまたま支払うことが出来なかっただけの人には、速やかに連絡をして、家賃支払いの督促、支払期日の交渉を行います。支払いが遅れた理由が明確で支払い意志がある場合は、連絡や交渉を行うことで、早期に解決することがあります。
ただし、支払い意志があってもお金がない人もいます。このような場合には、電話や口頭での交渉や口約束だけでは上手く問題の解決に繋がらないこともあります。内容証明を送るなど、書面を用いてしっかりと約束をしておくこともポイントです。
2-2.支払う気が感じられない滞納者
すでに何度も滞納を繰り返していたり、そもそも支払う意思がない入居者であれば、話し合いや交渉だけでは問題が解決しないことがあります。このような場合には、第三者を介した手続きや、法的な措置を行うことが効果的です。裁判所を交えた手続きとなる、
- ・支払督促
- ・少額訴訟
- ・明渡請求訴訟
などを行い法的手段で問題解決を進めていきます。
悪質な家賃滞納者は法的手段を用いることで、強制執行など、法的に追い出すことができます。
- 家賃滞納者を追い出し、立ち退きを迫る場合には原則として期間満了の6ヶ月前までに借家人に対し、解約の申し入れをしなければならないという決まりがあることも知っておきましょう。
2-3.法律違反なる可能性あり! やってはいけない督促
家賃滞納問題を解決するための督促には「やってはいけない方法」があることも知っておかなくてはなりません。法律を遵守した上で督促行為を行う必要があります。
- 連帯保証人以外への督促
- 鍵を勝手に交換する
- 荷物を勝手に持ち運ぶ
- 早朝、深夜(PM9:00~AM8:00)の督促
- 弁護士など代理人として選定した人以外へ督促を依頼する
- 滞納の事実を周囲に知らせること
上記はやってはいけない督促行為です。これらを守らず督促行為を行うと法律違反になり、裁判に発展した場合には、大家側に不利な材料となってしまいます。あくまでも法律を遵守した上での督促を行うように心掛けてください。
3.今後家賃滞納が発生した場合に備えて行っておくべき事とは
家賃滞納が発生した時でも、慌てず対処できるようにしておくことが大切です。家賃滞納が起こった時に備えるためのポイントを3つご紹介します。
3-1.管理会社にお願いする
家賃滞納トラブルなどを含めた、家賃回収などの入居者対応を管理会社にお願いする方法があります。家賃の回収業務や管理を管理会社に依頼します。家賃滞納が起こらないよう管理を行ってくれるほか、家賃滞納が行った場合でも、入居者対応や、大家さんと入居者の間に入って交渉をしてくれる存在となります。
ただし、この際には管理会社選びが重要です。管理会社の中には受け身のところも多く、家賃滞納が起きてもすぐ動かず、数ヶ月滞納して初めて動くような管理会社もあります。任せっきりにしないようにして、事前にどのような対応を行うかをヒアリングしながら、管理会社を選ぶ必要があります。
3-2.保証会社に入る
家賃滞納に備えて、家賃保証会社の家賃保証サービスに入っておくという選択肢があります。家賃保証会社とは、入居者が家賃を延滞したとき、立替え払いをしてくれる会社のことを言います。保証会社サービスに入っておくことで、家賃滞納時のリスクを下げることが出来ます。特に不動産投資を行っている投資家にとっては、家賃収入を安定させ安定収入を得ることはできるようになります。
3-3.自分で対処法の知識を身に付けておく
管理会社や家賃保証会社などの選択肢を知っておく以外にも、家賃滞納が発生することを想定して、対処法の知識を身に付けておくことも重要です。1章でもお話したような、家賃滞納が起こるメカニズムを知っておけば、入居前の段階でも多少の想定が出来るようになります。
- ・入居審査をする
- ・入居者の収入をする
- ・親族連帯保証人を必須にする
こうした条件を設けることで、家賃滞納の可能性がある入居者を選別したり、滞納が起きた際の対処法の選択肢を増やすことが出来ます。家賃滞納は未然に防ぐことが難しい一方で、知識をつけておくことでリスクを下げることも出来ます。
4.家賃滞納トラブルを避ける! ちょっと気を付けてみておくべき物件情報
家賃滞納トラブルへの対処法を3章でお伝えしましたが、その方法は入居者や入居の際に気を付けることがほとんどでした。その他にも、家賃滞納トラブルを避けるために、物件に注意するという視点があることもお伝えしておきます。
- ・家賃滞納リスクがありそうな物件は購入しないようにする
- ・審査が無し、保証人なし、の物件は家賃滞納リスクが高い
「こういう物件は、家賃滞納トラブルが多い」という知識を持っておくことで、そうした物件を購入することを避け、実際に購入した時でも、あらかじめリスクが高いことを想定して備えることも出来るようになります。不動産物件を購入してから、トラブルに悩まされたり慌てたりしないようにするためにも、家賃滞納が起こりやすい物件の条件を知っておくことも覚えておきましょう。
まとめ
1.家賃滞納が起こるメカニズム、対応を始めるタイミングを知っておきましょう。
2.支払う気がある・ないで対応は変わります。場合によっては法的措置も考える必要があります。
3.家賃滞納が起こることを想定して、対処法を身に付けておきましょう。
4.トラブルに繋がりそうな物件の条件を知っておき、なるべく避けるようにしましょう。
家賃滞納は大家さんの頭を悩ませるトラブルですが、知識を持ち、然るべき対応を取ることで適切に対処することが出来ます。必要なのはどのように対処すべきか、という知識を持つことです。法的手段も含めてどのように対処すべきか、方法を知っておくと安心です。
管理会社や保証会社と契約することで、ある程度の安心を買うことは出来ますが任せっきりも危険です。トラブルを避けるため、起こった時には適切な対処を行うためにも、大家自身が知識を持ち、自分自身でも対応出来るように備えておくことが大切です。
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