令和2年9月末まで! 不動産投資「消費税還付」の考え方

消費税還付は不動産投資家にとって重要なメリットの一つではあり、その恩恵を享受してきた人も多くいます。しかし、平成28年4月の消費税法改正により、不動産投資家の消費税還付が一部制限されることになりました。

この記事では、

  • ・不動産における消費税とは
  • ・課税売上を発生させるために流行った「自販機スキーム」
  • ・消費税還付を受けるにはどうすればいい?
  • ・令和2年度税制改正の影響は?

について解説します。

さらに、令和2年度税制改正でも、大きな変更がある予定ですので、そうした出来事もふまえ、この記事では消費税還付の最新事情をお伝えしていきます

1.不動産における消費税とは

1.不動産における消費税とは

1-1.「消費税とは何か?」のおさらい

こちらの記事では、「そもそも消費税とは?」という内容を解説しました。

簡単におさらいすると、

・消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。

・消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して、広く公平に課税されますが、生産、流通などの各取引段階で二重三重に税がかかることのないよう、税が累積しない仕組みが採られています。 

ということでした。

また、意外と知られていないこととして、「消費税が課税される取引には、併せて地方消費税も課税される。現時点で国税部分と地方税部分はそれぞれ7.8%、2.2%」ということもありました。

1-2.不動産における消費税とは

では、不動産における消費税とは何でしょうか。

不動産売買において、土地は消費税が非課税ですが、建物は消費税の対象です。

例えば、建物代金が1億円だとすると、現行税制の10%で1,000万円の消費税が課され、購入者は1億1,000万円の建物代金を支払うことになります。

不動産における消費税還付とは、この1,000万円を返してもらう、ということです。

実質負担額の図

※なお、建物でも売主が個人で自宅として使用していた建物を売買する場合は非課税となります。

では、この1,000万円を返してもらうために、そのまま確定申告で1,000万円を申告すればいいかというと、実はそういうわけではないのです。

というのも、大家さんが受け取る家賃収入は消費税が非課税のため、消費税1,000万円を「課税売上割合」というもので按分しなければならないからです。

「課税売上割合」は聞き慣れない言葉だと思いますが、消費税の計算上では、経費支出時に支払った消費税を丸々控除できるわけではなく、支払った消費税に課税売上割合を乗じた金額が実際に控除できる消費税額となる、と考えていただければと思います。

つまり、消費税額そのまま還付できるわけではなく、課税売上割合に応じて還付される金額が決まるということです。

したがって、もしその事業年度に家賃収入などの非課税売上しかない場合、課税売上割合は「0%」となり、物件購入時に支払った消費税は全く還付されないのです。

2. 課税売上を発生させるために流行った「自販機スキーム」

2. 課税売上を発生させるために流行った「自販機スキーム」

2-1.「自販機スキーム」とは

では、どのようにすれば課税売上を発生させ、還付金額を増やすことができるのでしょう。

単純にいえば、非課税売上の家賃収入よりも多くの課税売上を発生させる必要があります。そのために流行ったのが自動販売機設置スキーム(自販機スキーム)です。家賃収入とは違い、自動販売機の売り上げはすべて課税売上になります。

自販機スキームは、物件が完成するまでの課税期間にはあえて家賃収入(非課税売上)を計上せず、自動販売機の収入(課税売上)を計上することで、課税売上の割合を高めて建設にかかった多額の消費税の還付を受ける、というものです。

このスキームを使うことで、例えば自動販売機による収入が5万円(消費税5,000円)で、物件の建築コストが1億円(消費税1,000万円)の場合、5,000円から1,000万円を控除した金額である999万5,000円の還付を受けられたのです。

※税率10%で計算しています。

不動産取得と自販機の設置についての図

もし自販機を設置していなかった場合、売り上げは非課税売上100%の家賃収入のみのため、消費税還付を受けることはできません。しかし、賃料発生前に自販機を設置し、1本でも売り上げが立てば課税売上が100%となり、多額の消費税還付が可能となります。そのため、税法の抜け穴をついた自販機スキームは、全国的に流行ることになりました。

また、平成22年3月の消費税法改正以前は、消費税の課税事業者になるための「課税事業者選択届出書」を税務署に提出するだけで、簡単に消費税還付ができていたことも大きな要因だったといえるでしょう。

2-2.二度の税制改正による対策強化

しかし、そうした“やりたい放題”の消費税還付の状況を国税庁が放置しておくわけがありません。

まず自販機スキームを封じるために、平成22年3月に消費税法が改正されました。課税事業者選択届出書を提出後、課税事業者になって2年以内に課税不動産を取得し消費税の還付を受けた場合、その後3年間、免税事業者や簡易課税の選択をすることができないという内容でした。 

これによって、不動産購入時に消費税還付をしても、調整計算の対象となるように改正されたわけです。

しかしこの改正だと、課税事業者選択届出書を提出後、2年間何もせずに、3年目に入ってから不動産を購入することで、まだ消費税還付が可能です。

そのため、平成28年度にさらなる税制改正がありました。これにより、1,000万円以上の課税不動産を取得した場合は、必ず3年度の調整計算の適用を受けることになったのです。

その結果、不動産購入時に消費税還付をすると、必ず調整計算の対象となるようになったため、自販機スキームは封じられたことになりました。

3. 消費税還付を受けるにはどうすればいい?

3. 消費税還付を受けるにはどうすればいい?

3-1.消費税還付を受けるための大前提

さて、二度にわたる税制改正による対策強化により、不動産投資家にとっては主流だった自販機スキームが使えなくなりました。では、もう消費税還付を受ける方法はないのでしょうか。

実は、後述する令和2年の税制改正により、さらに規制が強化されます。しかし、それまでは理論上、まず以下の条件を満たすことにより、消費税還付を受けることができました。

新設法人を立ち上げること

そもそも消費税還付は個人事業主では行えず、法人にして会社を設立する必要があります新設法人の場合、通常設立初年度~2期目まで消費税の納税義務が免除されるというメリットがあります

すでに法人化している場合も、多額の非課税売上が計上されるため多くの還付金を受けられる可能性がかなり薄くなります。したがって、新規で会社を立ち上げて消費税還付を受けた方がメリットは大きいのです。

新消費税課税事業者選択届を出していること

消費税還付を受けるためには消費税の申告をして、消費税の課税事業者になる必要があります課税事業者選択届出書を設立初年度中に提出すれば、設立初年度から課税事業者となることができるため、忘れずに届出を提出することがポイントです。

3-2.消費税還付を受けるために

この2つの条件を満たした後、次の4つの対策を講じる必要があります。

初年度の家賃は受け取らない

前述したとおり、家賃収入は非課税売上のため、計上しないようにします。事業年度の終了時期は、引き渡しされた月の月末に設定しましょう。

少額の課税売上を計上する

消費税を還付するためには課税売上がないといけません。自販機スキームが使えなくなって以降は、金地金などの売買(課税売上)が適しているとされていました。これは、「金地金スキーム」と呼ばれ、自販機スキームの終焉以降、人気を博しました。

事業初年度に課税売上を計上する

当たり前の話ですが、消費税還付は購入年度に課税売上を計上しないと受けにくくなります。必ず初年度に課税売上を計上しましょう。

消費税の申告は、一括比例分配方式の税抜き経理を採用する

消費税の計算には、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2つがあり、どちらの計算方法を選択するかによって消費税還付の方法が大きく違ってきます。

これらは説明するとかなり難しくなるので、不動産投資の場合は「一括比例分配方式」で「税抜き経理方式」にすれば、比較的簡単な方法で消費税を決定できる、と覚えておいてください。

4. 令和2年度税制改正の影響は?

4. 令和2年度税制改正の影響は?

2019年12月に「2020年度(令和2年度)税制改正大綱」が自由民主党・公明党の与党より発表されました。これは税制改正の案であって、毎年12月頃に発表され、翌年の3月頃に国会で承認され、決定します。もし決定した場合、令和2年(2020年)10月1日から改正内容が適用されます。

このたびの税制改正大綱のなかでも、消費税に関して触れられているのは「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除制度の見直し」です。

令和2年度税制改正の大綱 https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/20191220taikou.pdf

4-1. 改正内容

具体的な改正内容を見てみましょう。

(1)住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産に該当するもの(以下「居住用賃貸建物」)の課税仕入れについては、仕入税額控除制度の適用が認められない。ただし、居住用賃貸建物のうち、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分については、引き続き仕入税額控除制度の対象とされる。  

(注)高額特定資産とは一取引単位につき支払対価の額が税抜1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいう。

(2)上記(1)により仕入税額控除制度の適用を認めないこととされた居住用賃貸建物について、その仕入れの日から同日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合又は譲渡した場合には、それまでの居住用賃貸建物の貸付け及び譲渡の対価の額を基礎として計算した額を、その課税期間又は譲渡した日の属する課税期間の仕入控除税額に加算して調整が行われる。

端的にまとめると、1,000万円以上の不動産を購入すると、仕入税額控除ができなくなります。つまり、消費税を払っているのに控除できないということなので、消費税還付もできなくなります。自販機スキーム以降、主流だった金地金などの売買や、金以外の課税売上を計上しても、還付することはできません

今回の税制改正は、消費税還付の仕組みを禁止するものではないものの、賃貸住宅用建物の取得時の消費税還付を一切認めないとする、不動産投資家にとっては非常に厳しいものだといえるでしょう。

消費税還付の悪用の手口と防止策

4-2.令和2年9月末までの取得なら間に合う

このたびの税制改正の対象は、2020 年(令和 2 年)10 月 1 日以後に仕入れた居住用賃貸建物になります。ただし、経過措置として 2020 年3月31日までに締結した契約に基づき、仕入れた賃貸建物には適用しません

つまり、2020年9月末までに賃貸住宅用建物を取得した場合、または2020年3月末までに賃貸住宅用建物の取得契約を行った場合は、消費税還付を受けることができます

強いていうならば、賃貸住宅用の不動産を取得する人にとって、この期間が消費税還付は最後のチャンスとなるかもしれません。

5.まとめ

1. 不動産売買において、土地は消費税が非課税だが、建物は消費税の対象となる。ただし、消費税の計算上では、経費支出時に支払った消費税を丸々控除できるわけではなく、支払った消費税に課税売上割合を乗じた金額が実際に控除できる消費税額となる

2. 課税売上の家賃収入よりも多くの課税売上を発生させるために流行ったのが自販機スキーム。しかし、過去二度の税制改正により、このスキームは使えなくなった。代わりとなったのが金地金などの売買で課税売上を立てる手法である

3. しかし、令和2年の税制改正により、金地金などの売買や、金以外の課税売上を計上しても、諸費税を還付することはできなくなった例外は、2020年9月末までに賃貸住宅用建物を取得した場合、または2020年3月末までに賃貸住宅用建物の取得契約を行なった場合である

いかがでしたか。消費税還付は不動産投資家にとってネット利回り(=実質利回り)を左右する非常に大きな要素でしたが、グレーゾーンを狙う投資家とそれを追い詰める国税庁の攻防が続き、ついに2020年には不動産投資における消費税還付は不可能になりそうです。

ただ、「歴史は繰り返す」といわれるように、もしかしたら別の方法で消費税還付する方法が生み出されるかもしれません。いずれにせよ、不動産投資家にとっては重要なトピックですので、この記事をきっかけに今後も意識を向けていただければと思います。

令和2年9月末まで!_不動産投資「消費税還付」の考え方
最新情報をチェックしよう!
>再建築不可物件の建築可能化プログラム

再建築不可物件の建築可能化プログラム

「再建築不可物件」を使った不動産投資は、誰にでもできる簡単な方法でありません。 しかも、「投資」ですから、リスクはそれなりにあります。 それでも、リスクよりもメリットの方が大きいとも言えます。 その理由と、私たちの具体的なサポート内容などをセミナーでご説明いたします。 また、質疑応答の時間も用意しておりますので、ご不明な点はどうぞ遠慮なくお尋ねください。

CTR IMG